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サバイバルカード・アクションカード改訂版 (2016)の掲載にあたって

サバイバルカード・アクションカード改訂版(2016)の掲載にあたって

井口 清太郎(新潟大学大学院医歯学総合研究科新潟地域医療学講座地域医療部門)

〔日内会誌 105:1489~1491,2016〕

 本年(2016年)4月14日,「平成28年熊本地震」が発生した.ここ5年,激甚災害として指定された震災は2011年の東日本大震災,2014年の長野県安曇野郡を襲った震災と相次いでいる.激甚災害に指定される災害は震災にとどまらず,台風や豪雨など毎年のように日本の各所で起こっている.近年の災害医療は,急性期対応はもちろんのこと,慢性期への対応にも注目が集まっている.今後,内科医の災害時対応にも期待や要請が高まってくるものと思われる.
 日本内科学会では,学会誌を通して,シリーズ「内科医と災害医療」の掲載を2010年より開始した.これは2004年,2007年に発生した新潟県中越地震,中越沖地震の経験を踏まえて,災害発生時には,外傷だけでなく,多くの内科的対応が求められる現実を目の当たりにし,内科医も災害医療に関わることができるよう,いや積極的に関わっていただきたいとの思いから,企画されたものであった.
 災害医療において内科医に着目してほしいのは,間接死(いわゆる災害関連死)の問題である1).災害に対応した医療支援チームとしてDMAT(Disaster Medical Assistance Team)が普及してきた要因でもある「preventable deathを減らす」という点では,事後に亡くなってしまう災害関連死も大いに減らすことができる可能性があり,この間接死こそ,内科医が関わることのできる「preventable death」といえよう.
東日本大震災における災害関連死者数は2015年9月30日現在で3,407名にものぼっている2)
 これまでの本シリーズの掲載内容は表にまとめたように,災害時に急増する内科的疾患はもとより,内科医故に関わらざるを得ない病態,災害時に至急の対応を要する病態など内科医に関わりの深い病態の整理から,災害時に必要なマネジメント,心のケア,在宅医療への関わり,さらには,近年着目されている生活不活発病など多岐にわたる(表).

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 また,最初の掲載時には,日本内科学会としては初めての試みとして,日内誌内に折り込みのサバイバル/アクションカードを盛り込んだ.これは厚手の紙に印刷されたもので,切り離し,折りたたんで携帯できるようにしたものであった.これらは2011年の東日本大震災時にはいち早くPDF化し,内科学会のホームページ上に公開され,ダウンロードして利用された.
 これらについては事後のアンケート結果でもおおむね肯定的な評価をいただいた3).また,「平成28年熊本地震」については発災直後より,同様に内科学会ホームページ上に特別ページを設けて対応した.今回,余震が数多く発生するなど当初は中越地震に類似した経過をたどったことからも,循環器系の疾患,肺塞栓など車中泊に関わる問題が多く発生することが予想されたため,これらを中心とした記事を直接ダウンロードできるようにした4).このような活動を通じて,多くの内科学会会員の諸兄に災害医療に関心をもっていただく機会を増やしていきたい.また,これまで啓発や情報発信を中心とした内科学会としての活動や役割についても検証を行う必要があると考える.災害医療は決して救急や外傷だけの問題ではなく,特に超高齢社会である日本にあっては内科的な対応を抜きにして「preventable death」を減らすことはできないからである.
 今回,我々,日本内科学会災害医療ワーキンググループでは,主に東日本大震災の経験を踏まえ,サバイバル/アクションカードの6年ぶりとなる全面改訂を行った.特に災害医療の現場における「場」を軸とした切り口で改訂を行った.具体的には「病院・診療所」「避難所」「在宅医療」などの「場」であり,より実際に即したものとなっている.災害が発生した際には会員諸兄の役に立つものとなるよう心がけた.
 その改訂作業中に,「平成28年熊本地震」が,これまで地震災害についてあまり警戒されていなかった地域で発生した.だが,後からの報道をみる限り,数百年前から地震発生の記録があり,ただ我々が生きている間に発生がなかったことから特段の警戒をしてこなかったこともあるように思われる.改めて,先の震災に際してどのようなことが起こり,どのように対応し,今後,活かすべき教訓は何であるのか,我々は知っておく必要があると思われる.地質学的な時間軸の中では,日本国内のどこで地震が起きようとも不思議はないのである.最後に今一度,先人寺田寅彦が遺したといわれる格言を噛み締めたい.曰く「天災は忘れた頃にやってくる」と.

著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表内容に関連して特に申告なし

文献
  1.  井口清太郎:シリーズ:災害医療ミニシンポジウム報告.日内会誌 104 : 800―802, 2015.
  2. 復興庁:東日本大震災における震災関連死の死者数.http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-6/20151225_kanrenshi.pdf
  3. 田中純太:第111 回日本内科学会講演会「災害医療ミニシンポジウム」内科系関連学会へのアンケート結果:災害医療および災害対応に関するアンケート~東日本大震災における内科系サブスペシャルティ学会の対応と見解~.日内会誌 104 : 808―816, 2015.
  4. 日本内科学会:「平成28 年熊本地震」について.http://www.naika.or.jp/saigai/kumamoto/
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