
CPC『急速に進行し肝不全に至った多発肝腫瘍の1例』
今回の教育セミナーでは、急速に進行し肝不全に至った多発肝腫瘍のCPCを行います。画像検査では診断がつかず、血小板減少を契機に施行した骨髄生検が診断の一助となった症例です。専門の先生、専攻医の先生方を交えて質疑応答・討論をしていただきます。総合内科専門医だけでなく、臨床研修医などすべての方々が参加可能になっておりますので、奮ってご参加ください。
開催日 | 2025年5月25日(日) 15時30分~16時30分 |
開催形式 | 現地開催のみ |
現地会場 | KDDI維新ホール 第1会場 |
企画 | 専門医部会中国支部 |
世話人 | 川崎医科大学 山根 弘路 |
参加費 | 1,000円(税込) ※現地会場で教育セミナーに参加する場合、地方会の参加登録(参加費:2,000円)をもって無料でご参加いただけます。 |
事前参加登録方法 | 決まり次第、お知らせいたします。 |
事前参加登録期間 | 決まり次第、お知らせいたします。 |
認定更新単位設定 | 【認定内科医・総合内科専門医】2単位 入退場時間記録について |
【内科専門医】[出席単位]:なし [参加単位]:1時間1単位 ※参加時間が問われます 「内科専門医」資格の認定と更新についてのご案内 |
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注意事項 | 単位がパーソナルウェブに反映まで1か月程度かかります 参加状況確認後、事務局にて自動付与いたします。別途申請等を行う必要はありません。 |
- 司会
- 山口県立総合医療センター 消化器内科 大野 高嗣
- はじめに
- 川崎医科大学 総合内科学4 山根 弘路
- 症例提示
- 山口大学大学院医学系研究科 消化器内科学 藤岡 毅
- 質疑応答・討論
- 山口大学大学院医学系研究科 病態制御内科学 山本 薫
山口大学大学院医学系研究科 呼吸器・感染症内科学 宇都宮 利彰
山口大学大学院医学系研究科 消化器内科学 田邉 規和
宇部中央病院 消化器内科 石山 圭斗(専攻医)
山口大学大学院医学系研究科 病態制御内科学 竹里 明莉(専攻医) - 病理提示
- 山口大学大学院医学系研究科 病理形態学 森重 拓士
【主訴】なし
【現病歴】81歳男性。X-8年の胸部単純CTで肺門部リンパ節腫脹や肺結節影・粒状影を認め、肺サルコイドーシスが疑われ、他院で生検を施行されたが病理学的な確定診断はできなかった。X-2年まで他院で画像検査による経過観察が行われていたが、増大を認めかったため終診となった。当院には慢性心不全(拡張型心筋症疑い)、発作性心房細動、前立腺肥大症、腹部大動脈瘤手術後でかかりつけであった。X年2月16日の血液検査で肝障害(AST 221 U/L、ALT 111 U/L、T-bil 1.9mg/dL)を認め、同日、消化器内科に紹介となった。血液検査では、CEA、CA19-9の上昇を認め、腹部超音波検査で肝内に低エコー病変を散見した。転移性肝腫瘍などを疑い造影CT検査を施行したところ、肝内に造影効果が乏しい低吸収結節を複数認め、新規の縦隔リンパ節腫大も認めた。肝腫瘤の造影パターンや以前の病歴から肺病変も含めて、サルコイドーシスが疑われた。肝障害については経過観察とし、肝腫瘍の精査を予定した。呼吸器症状は認めなかったが、肝障害の急速な増悪を認め、精査加療目的にX年3月2日に入院となった。
【既往歴】腹部~右総腸骨動脈瘤手術(X-16年)、慢性副鼻腔炎、肺非結核性抗酸菌症(Mycobacterium avium complex)
【生活社会歴】飲酒:機会飲酒、喫煙:20本/日×45年(20-65歳)、職業:大工・セメントの仕事
【アレルギー歴】なし
【内服薬】
シロドシン8mg/day | ファモチジン20mg/day | アピキサバン10mg/day |
ダパグリフロジン5mg/day | エナラプリル10mg/day | カルベジロール1.25mg/day |
エピナスチン10mg/day | モンテルカスト10mg/day | セルニチン252mg/day |
小青竜湯5g/day | フルチカゾン点鼻液 | モメタゾン点鼻液 |
ヒアルロン酸Na点眼液 | ピレノキシン懸濁性点眼液 |
【主な入院時現症】身長 164cm、体重 59kg、BMI 21.9、体温 36.1℃、脈拍 79/分、血圧 109/94mmHg、SpO2 97%(room air)、意識レベル:JCS0、眼瞼結膜貧血なし、眼球結膜黄染あり、表在リンパ節腫脹なし、皮膚黄染あり、胸部:心音 清、呼吸音 清、腹部:平坦・軟、正中に手術痕あり、両下腿圧痕性浮腫あり。
【主な検査所見】血液検査:赤血球 374万/μL、Hb 11.9 g/dL、白血球4030/μL(好中性骨髄球2.5%、好中性後骨髄球2%、好中球桿状核球5.5%、好中球分葉核球57%、好酸球1.5%、好塩基球1%、リンパ球18.5%、単球9%、異型細胞3%、赤芽球12.5%)、血小板 4.5万/μL、凝固検査:PT-INR 2.09、APTT 55.5秒、Fib 349 mg/dL、D-dimer 4.8 mg/L、AT-Ⅲ 85.3%、血液生化学所見:Na 142 mmol/L、K 4.3 mmol/L、Cl 110 mmol/L、Ca 8.8 mg/dL、P 1.8 mg/dL、BUN 24 mg/dL、Cre 0.93 mg/dL、TP 6.5 g/dL、Alb 3.0 g/dL、AST 455 U/L、ALT 201 U/L、LD 1112 U/L、ALP 910 U/L、γ-GTP 2026 U/L、T-bil 6.2 mg/dL、D-bil 4.5 mg/dL、ChE 274 U/L、TG 41 mg/dL、T-Chol 234mg/dL、NH3 63 μmol/L、血糖 102 mg/dL、HbA1c 7.1%、ACE 6.0U/L、リゾチーム 3.2 μg/mL、IgE 22 IU/mL、IgG 1414.8 mg/dL、IgM 97.3 mg/dL、フェリチン 3712.2 ng/dL、可溶性IL2受容体 509 U/mL、CEA 236.1 ng/mL、CA19-9 399.4 U/mL、AFP 1.7 ng/mL、AFP-L3 <0.5%、PIVKA-Ⅱ 31.9 mAU/mL、免疫血清学所見:CRP 1.89 mg/dL、抗核抗体 40倍 (Homogeneous pattern)、抗ミトコンドリアM2抗体(-)、HBs抗原(-)、HCV抗体(-)
腹部超音波検査:肝両葉に15mm未満の境界明瞭な低エコー結節を複数認める。
造影CT:門脈相で肝左葉に造影効果が乏しい複数の低吸収結節を認める。既知の肺内の小結節影と肺門部リンパ節腫大は著変がないが、新規縦隔リンパ節腫大を認める。
【入院後経過】黄疸の急速な増悪を認めたため、第1病日に緊急でEOB-MRIを施行したところ、肝両葉に新規小結節影を多数認めた。病勢進行が急速で、肝不全が進行しており、肝腫瘍生検は施行できなかった。また、血液検査で汎血球減少や異型細胞の出現を認めたため、第2病日に血液内科へコンサルトした。骨髄穿刺を施行され、CD45(-)、CD56・CD117(+)の異型細胞を認めた。第5病日に追加で骨髄生検を施行され、骨髄癌腫症と診断された。病勢進行の程度を考慮すると、肝内病変は肝サルコイドーシスよりも固形癌の多発肝転移の可能性が高いと考えられた。腫瘍マーカーを追加で測定したところ、NSE 683.8 ng/mL、ProGRP 51216 pg/mLが高値であった。原発巣の検索目的に第6病日にPET-CTを施行し肝内(SUVmax 4.58)、縦隔リンパ節、右鎖骨上窩リンパ節、骨にFDGの集積を認めたが、肺内を含め原発巣を指摘できなかった。固形癌の多発転移と考えたが、全身状態から薬物療法の導入は困難であったため、best supportive careの方針となり、第14病日に永眠された。
【Problem list】#1多発肝腫瘍 #2-1 骨髄癌腫症 #2-2 血小板減少