
『尿路上皮癌化学療法時に発症し治療と診断に苦慮した急性肝障害の一例』
今回の教育セミナーでは、診断に難渋した尿路上皮癌の症例について、CPCを実施いたします。本症例は、急速に肝不全を来した経過をたどり、その原因診断と対応に大きな困難を伴ったものです。近年、がん化学療法においては免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の臨床応用が進展しており、それに伴い、内科各専門領域間の連携による患者管理の重要性が一層高まっています。本例のような病態は、今後、内科医が日常診療の中で頻繁に直面しうる可能性があり、本セミナーは臨床腫瘍分野にとどまらず、すべての内科領域の先生方にとっても新たな知見や教訓を得ていただける貴重な機会となるはずです。今回は、本症例に関連する領域の専門医や若手研修医の先生方を交え、幅広く質疑応答と討論を行います。総合内科専門医のみならず、初期・後期研修医、指導医、ご開業の先生方など、すべての医師の皆様にご参加いただき、活発な意見交換の場となることを願っております。ぜひ奮ってご参加ください。
開催日 | 2025年11月22日(土) |
開催形式 | 現地開催のみ |
現地会場 | 岡山コンベンションセンター コンベンションホール |
企画 | 専門医部会中国支部 |
世話人 | 川崎医科大学 山根 弘路 |
参加費 | 無料 ※第133回中国地方会へのご参加をお願いいたします。 |
認定更新単位設定 | 【認定内科医・総合内科専門医】2単位 ※参加時間は任意といたしますが、60分以上のご参加をお願いいたします。 入退場時間記録について |
【内科専門医】[出席単位]:なし [参加単位]:1時間1単位 ※参加時間が問われます 「内科専門医」資格の認定と更新についてのご案内 |
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注意事項 | 単位がパーソナルウェブに反映まで1か月程度かかります 参加状況確認後、事務局にて自動付与いたします。別途申請等を行う必要はありません。 |
- 司会
- 川崎医科大学 総合内科学4 山根 弘路
- はじめに
- 川崎医科大学 総合内科学4 山根 弘路
- 症例提示
- 川崎医科大学 総合内科学4 河原 辰由樹
- 質疑応答
- 川崎医科大学 総合内科学2 谷川 朋弘
岡山赤十字病院 呼吸器内科 田岡 征高
川崎医科大学 総合医療センター 常松 紀鷹(研修医)
独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 松尾 祐佳(専攻医) - 病理提示
- 川崎医科大学 病理学 藤原 英世
【主訴】呼吸困難
【現病歴】X年4月末より右背部痛を主訴に各種検査の後に右尿管原発尿路上皮癌の診断で泌尿器科にてGC療法(ゲムシタビン、シスプラチン)を3サイクル施行した.その後、X年8月に後腹膜腹腔鏡下右腎尿管全摘術が施行された. 病理結果では肉腫様型浸潤性尿路上皮癌 High grade (WHO G3) 、pT4N1M1の診断で、その後外来で膀胱鏡を含め経過観察されていた.
X年10月より呼吸苦が出現したため、胸腹部CT検査を施行したところ、慢性気道感染を疑う浸潤影・粒状影と、縦隔リンパ節転移、多発骨転移(Th11, L4)を認め、再発と判断された. 抗菌薬加療の後に2次治療としてペムブロリズマブの投与目的で当科へ紹介された.
【現症】
身長 173 cm、体重 70 kg、performance status 1
意識清明、体温 36.7℃、血圧 122/82 mmHg
心拍数 82回/分、SpO2 98%(室内気)、呼吸数 16回/分
頭頸部:表在リンパ節触知せず
胸部:呼吸音: 軽度両側下肺野でfine crackles(+)
心音:整・心雑音なし
腹部:平坦、軟、圧痛なし、腸蠕動音良好
四肢:浮腫なし
【既往歴】僧帽弁狭窄症、高血圧症、虫垂炎、前立腺肥大症、2型糖尿病
【内服歴】シロドシン、クロペラスチン塩酸塩
【家族歴】特記事項なし
【アレルギー歴】特記事項なし
【嗜好歴】喫煙:60本×30年、飲酒歴:機会飲酒
【主な検査所見】血液検査;赤血球435万/µl、Hb 12.8g/dl、白血球6390/µl、好中球65.5%、リンパ球20.7%、血小板25.8万/µl、凝固検査:PT-INR1.03、APTT 28.6秒、血液生化学所見:Na 136mEq/L、K 4.5mEq/L、CI 103mEq/L、Ca 9.1mg/dl、BUN 23mg/dl、Cre 1.73mg/dl、TP 7.6g/dl、Alb 4.1g/dl、T-bil 0.6mg/dl、AST 95IU/L、ALT 93IU/L、ALP 1408U/L、γ-GTP344U/L、LDH 278U/L、BS 104mg/dl、HbA1c 5.6%、免疫血清学所見:CRP 3.71mg/dl、動脈血ガス:pH 7.409、pCO2 34.8 mmHg、pO2 94.4mmHg、Lac 0.6mmol/L、BE -2.0mmol/L
CT所見:両側肺底部に気腫状変化 右肺下葉に浸潤影があり、喫煙に伴う肺気腫、および感染に伴う炎症性変化と思われる。胸水なし、反応性リンパ節腫大あり。
【治療経過】X年11月初旬よりペムブロリズマブを投与した. 入院前より、肝胆道系酵素の上昇を認めており、治療開始後も徐々に増悪あるため、胆道閉塞や肝転移を疑い、腹部超音波検査、胸腹部造影CT検査、MRCP検査を行った.
【ALPアイソザイム】ALP1 15%、ALP2 81%、 ALP3 4%
【DLST】シロドシン、クロペラスチン塩酸塩 共に陰性
【感染症】
・HBs-Ag (-)、HBs-Ab>1000 (+)、HBc-Ab (+)、HBV DNA 不検出、HCV-Ab (-)
・CMV:IgG 57.3 (+) 、IgM 0.89 (±) 、C7-HRP(-)
・EBV:抗VCA IgG 2.0 (+)、IgM 0.0 (-)、抗EA IgG 0.6 (±)、抗EBNA IgG 2.4 (+)
その後、急速に肝障害が進行した. IrAE胆管炎やウイルス性肝炎の急性増悪なども考慮に入れ、肝庇護剤投与およびGI療法、免疫抑制剤投与なども行ったが肝障害は制御不能であり、最終的に肝不全・多臓器不全の状態となり、X年11月末 永眠された.
【Problem list】
#肝障害・肝不全
#肺炎
#COPD
#尿路上皮癌再発