CPC in IZUMO『熱源を特定できなかった1例』
内科医として、一般診療で遭遇する臨床症状に対応するノウハウを勉強することを主旨としている会です。専門領域が異なる先生方から、症例提示と講義をしていただきます。また、司会者、企画担当者を加えて質疑応答を行います。総合内科専門医だけでなく、認定内科医、あるいは臨床研修医などすべての方々が参加可能になっておりますので、奮ってご参加ください。
| 開催日 | 2026年10月17日(土) |
| 開催形式 | 現地開催のみ |
| 現地会場 | ビッグハート出雲 |
| 企画 | 専門医部会中国支部 |
| 世話人 | 川崎医科大学 山根 弘路 |
| 参加費 | 無料 ※第135回中国地方会へのご参加をお願いいたします。 |
| 認定更新単位設定 | 【認定内科医・総合内科専門医】2単位 ※参加時間は任意といたしますが、60分以上のご参加をお願いいたします。 入退場時間記録について |
| 【内科専門医】[出席単位]:なし [参加単位]:1時間1単位 ※参加時間が問われます 「内科専門医」資格の認定と更新についてのご案内 |
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| 注意事項 | 単位がパーソナルウェブに反映まで1か月程度かかります 参加状況確認後、事務局にて自動付与いたします。別途申請等を行う必要はありません。 |
- 司会
- 島根県立中央病院 循環器科 井本 宏治
- 出雲市立総合医療センター 総合診療科 福原 寛之
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- はじめに
- 川崎医科大学 総合内科学4 山根 弘路
- 症例提示
- 浜田医療センター 循環器内科 花本 航希
- 質疑応答
- 松江赤十字病院 救急部 桐木 開成
雲南市立病院 地域ケア科 阿部 香澄
島根大学 総合医療学講座 村上 航太朗 - 病理提示
- 島根大学 医学部医学科器官病理学講座 床並 亜有子
【主訴】吐血、下血
【現病歴】70歳代、男性。20XX年X月X日、夕食後に突然の吐血・下血があり当院救急外来を受診した。Hb 6.8 g/dLの高度貧血と、単純CTで胃内に高吸収の貯留物(血腫疑い)を認め、上部消化管出血の疑いで緊急入院となった。胸痛の訴えはなかったが、入院時の12誘導心電図でⅡ・Ⅲ・aVF・V1–V5のST上昇とⅠ・aVLのST低下を認め、循環器科にコンサルトされた。
【既往歴】2型糖尿病、慢性腎臓病、上行結腸・S状結腸癌術後
【生活社会歴】喫煙:30本/日(21〜40歳)、飲酒:なし 【アレルギー歴】なし 【家族歴】特記事項なし
【内服薬】シタグリプチン 50 mg/day、イプラグリフロジン 50 mg/day
【主な入院時現症】
身長 163 cm、体重 74.8 kg、BMI 28.2、体温 36.5℃、血圧 96/60 mmHg、心拍数 90回/分、SpO2 98%(room air)、GCS E4V5M6、呼吸音:両側清、心雑音聴取せず、両下腿浮腫なし、末梢冷感あり。
【主な検査所見】
血液検査:WBC 14,280/μL(好中球 13,070/μL)、Hb 6.8 g/dL、Plt 18.7万/μL、D-dimer 2.75 μg/mL、Alb 2.8 g/dL、AST 102 U/L、ALT 42 U/L、LDH 399 U/L、CK 1,110 U/L、TnI 32,378 pg/mL、BUN 42.6 mg/dL、Cre 2.27 mg/dL、eGFR 22.7 mL/min、Na 136.4 / K 5.5 / Cl 107.2 mEq/L、CRP 1.20 mg/dL、T-Cho 103 mg/dL、LDL-C 57 mg/dL、血糖 273 mg/dL、HbA1c 7.1%
心電図:洞調律 91回/分、心室性期外収縮、Ⅱ・Ⅲ・aVF・V1–V5でST上昇、Ⅰ・aVLでST低下
胸部X線:心胸郭比 55.8%、胸水なし、肺うっ血なし 単純CT:胃内に高吸収な貯留物(血腫疑い)
心エコー:左室駆出率(LVEF)40%、左室拡張末期径/収縮末期径 57/42 mm。前壁中隔は基部から心尖部まで高度の壁運動低下〜無収縮、下壁は高度の壁運動低下で心尖部に内膜輝度の上昇、前側壁から後側壁は軽度の壁運動低下。
【入院後経過】
ST上昇型急性心筋梗塞が疑われたが、冠動脈造影(CAG)・経皮的冠動脈形成術(PCI)にはヘパリンや抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を要し出血を助長するリスクがあることから、出血コントロールを優先し、緊急輸血のうえ保存的加療とした。入院当日の上部消化管内視鏡で胃角部小彎に血餅の付着した潰瘍を認め、生検で低分化腺癌・印環細胞癌、胃癌 StageⅢと診断した。下部消化管内視鏡では直腸に3型腫瘍を認め、中分化腺癌、直腸癌 StageⅡAと診断した。入院翌日の心エコーで血行動態は非代償状態となり、第8病日にかけて心不全加療を行ったが体重は減少せず(75.3→75.0 kg)、左室駆出率は40%から28%へ低下した。
早期手術が望ましいものの、虚血の解除なしには心不全のコントロールが得られないと判断し、手術に先立ちCAG・PCIを行う方針とした。CAGで3枝病変を認め、責任病変と考えられた左冠動脈前下行枝にPCI(ステント留置)を施行した。PCI後より尿量 5–10 mL/hr(フロセミド持続投与下)と低下し、ノルアドレナリン持続投与下で血圧 80–90 mmHg、肺うっ血の増悪(心胸郭比 53→59%)を認め、心原性ショックと判断してPCI翌日に大動脈内バルーンパンピング(IABP)を留置しICUに入室した(以下、IABP留置日をday 1と記載)。
留置後は尿量が確保され、カテコラミンと利尿薬による心不全加療を継続してday 8にIABPから離脱した。その後Cre 2.8→3.4 mg/dLと腎機能が増悪したが、うっ血によるものと評価し利尿を強化したところ、尿量の増加とともにCre 2.4 mg/dLへ改善した。day 14に37.7℃の発熱とCRP 12.3 mg/dLの上昇を認め、メロペネムを開始したところ、血液培養1セットからコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の一種であるStaphylococcus lugdunensisが検出された(day 20に感受性判明、バンコマイシンへ変更)。解熱しCRP 4.7 mg/dLと低下したため、day 22にICUを退室した。
しかしday 23に再び38.0℃の発熱とCRP 9.3 mg/dLの上昇、Cre 2.4→2.9 mg/dLの腎機能増悪、尿量 530 mL/dayへの減少を認め、ICUへ再入室した。単純CTで両肺下葉に軽度の気管支肺炎(誤嚥性肺炎疑い)を認めバンコマイシンにメロペネムを追加したが、炎症反応は持続的に高値(CRP 最高17.1 mg/dL)で、腎機能の増悪と尿量減少が進行した。day 23・26の血液培養・尿培養はいずれも陰性、尿検査に特記所見はなく、心エコーで感染性心内膜炎を示唆する所見も、単純CTで膿瘍形成も認めなかった。day 27に好酸球 502/μLと増多を認め、薬剤性腎障害を考慮してダプトマイシンへ変更したが、好酸球はその後729→964→813/μLと推移し、Creも3.2→4.3 mg/dLと増悪した。他に熱源を指摘できないまま全身状態の改善は得られず、day 32に死亡退院となった。持続する炎症反応高値と腎機能増悪の原因究明のため、病理解剖を依頼した。
【Problem list】
#1 慢性腎障害の増悪 #2 発熱・炎症反応上昇(熱源不明) #3 ST上昇型急性心筋梗塞、急性非代償性心不全 #4 胃癌(StageⅢ) #5 直腸癌(StageⅡA) #6 2型糖尿病 #7 慢性腎臓病
