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超高齢社会で果たすべき日本内科学会の役割と責務(宣言)

 わが国の高齢化率はすでに26%を超え、2050年には40%に達すると予想されています。このような人類がかつて経験したことがない未曾有の超高齢社会において、医療はいかにあるべきかを、すべての国民が真剣に考えていく必要があります。国も社会保障制度改革国民会議の報告を受け、医療・介護・福祉の在り方を抜本的に改革するよう取り組んでいます。
 一方、わが国の医師数は現在約31万余人を数えますが、そのなかで日本内科学会は会員数約11万名を擁し、国内の医学系学会では最大の規模となっています。
 今後、進展する超高齢社会を前に、全医師の3人に1人にのぼる多数の医師が所属する日本内科学会が果たすべき役割と責務がますます重くなることを認識し、日本内科学会がいかに貢献すべきかを検討して参りました。

 本来、内科学とは最初に患者に寄り添う学問であり、臓器を特定せず、さらには患者の心理・社会的側面をも考慮した全人的医療を目指すものです。日本内科学会では、100年を超える講演会事業や学術誌刊行事業、そして、約50年になる認定医制度(専門医制度)事業などを通じて、全人的医療の発展とそれを担う内科医の育成に積極的に取り組んで参りました。
 一方、医学・医療の急激な進歩とともに、内科領域では臓器別医療が脚光を浴びるようになるにつれ、日本内科学会は専門分化する内科系臓器別専門学会が集合する、あるいはそれを集約する役割を帯びるようにもなってきました。内科の各臓器別専門学会と連携・協力することは、日本内科学会の重要な任務のひとつです。人は単なる臓器の集合体ではないことから、内科は患者の全身を診て、社会的背景やクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)にも配慮した全人的医療を行うという、内科学の本来の姿を見失ってはなりません。
 この趣旨を踏まえ、日本内科学会と関連する内科の各臓器別専門学会は質の高い内科医の育成のために、専門医の二段階研修(内科全般にわたるジェネラルな一段階目の研修を終え、各専門科研修へと深化していく二段階の研修制度)に長年取り組んで参りました。

 超高齢社会を迎えた現在、高齢者の多くは多臓器にまたがった疾患を抱えていることに改めて留意する必要があります。このような高齢者の疾患の特徴を踏まえると、臓器横断的に全身を診ることができる内科医の育成は、今まで以上にニーズが増していくと考えられ、社会からもその方向への改革が求められています。医療の現場においても内科医はその特性として臓器別専門医の専門性を維持しつつも、疾病を持った患者さんの全身を横断的・俯瞰的に診ることが求められます。新しい専門医制度に向けて、日本内科学会は研修体制を見直して充実を図っておりますが、その背景はここにあります。
 以上を踏まえ、超高齢社会が進展するわが国の現状を鑑みると、日本内科学会の果たすべき役割と責務は、内科学の総合的な力をもって超高齢社会を支えることに他なりません。そこで日本内科学会はその本来の原点に立ち返り、以下の宣言を行います。

 

 日本内科学会は進展する超高齢社会の医療を支えるため、ひとりひとりの生活の質に配慮し、全身を診る、臓器横断的な診断治療を行える内科医の育成に努めます。

 

 この目的のために日本内科学会は、内科医の一層の質の向上に向けた新しい専門研修プログラムの充実や、より質の高い医師生涯教育の普及等の活動を通じて、「より良い内科医」の育成を図っていきます。また、これから国全体で本格化するであろう地域医療への取り組みにも積極的に参画していく所存です。

 

平成29年3月30日 

一般社団法人日本内科学会 理事長 門脇 孝
同「学会在り方検討委員会」委員長 伊藤 宏


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