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利益相反(COI)指針とその運用に関するQ & A

平成29年5月19日 現在

1.医学系研究に係る利益相反(COI)について

医学系研究とは漠然としていますが、具体的にはどこまでの研究をいうのでしょうか?
「医学系研究」とは、人間(試料・情報を含む。)を対象として、疾病の成因の究明(健康に関する様々な事象の頻度および分布ならびにそれらに影響を与える要因を含む。)および病態の理解や、疾病の予防や医療における診断方法および治療方法の改善または有効性の検証を通じて、国民の健康の保持増進または患者の予後若しくは生活の質の向上に資する知識を得ることを目的として実施される活動を言います。文部科学省・厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(2014年12月22日全部改訂)に定めるところによるものとしています。なお、世界医師会公表のヘルシンキ宣言で使用された「human subjects」は日本医師会の日本語訳「人間」を当ガイドラインに用いています。
産学連携で医学系研究を行う場合、何故、利益相反(COI)が起こるのですか?
人間を対象とする医学系研究を産学連携で行う場合に考慮を要するのは、他の領域の産学連携研究とは異なり、医学系研究の研究対象者として健常人、患者などの参加が不可欠であるという点です。したがって、産学連携による医学系研究に携わる者には、一方においては、研究者として資金及び利益提供者である製薬企業などに対する義務が発生し、他方においては研究対象者の生命の安全、人権擁護をはかる職業上の義務が存在します。
同一研究者におけるこのような二つの義務の存在は、単に形式的のみならず、時には実質的にも相反し、対立する場面が生ずる。1人の研究者をめぐって発生するこのような義務の衝突、利害関係の対立・抵触関係がいわゆる利益相反(Conflict Of Interest : COI)と呼ばれる状態です。換言すれば産学連携で行われる医学系研究は形式的に見るかぎり、ほとんど利益相反(COI)の状態にあり、回避することが出来ないと云えます。
利益相反(COI)状態が何故、臨床研究で問題になるのですか?
臨床研究は、新しい診断法、治療法、予防法などを作っていくための重要な情報源となります。研究者が特定企業との金銭関係や個人的な関係が強くなればなるほど、関係企業を優先し、バイアスリスクの発生が起こりやすい。深刻な利益相反(COI)状態が適切に管理されていないと、極端な場合には研究不正の原因となる可能性もあります。その結果、誤った解釈や結論が導かれ、多くの患者が誤った治療を受けたり、国民に無駄な金銭的負担を強いることになるからです。
企業との関わりから想定されるバイアスリスクとはどのようなものがありますか?
臨床研究は結果がどうあれ、すべて論文公表する義務が研究者に課せられています。しかし、臨床研究の実施や結果の解釈、論文公表の過程で企業が影響力を及ぼす環境や契約がなされると、下記のようなバイアスが起こりやすくなります。
1)臨床研究Trial bias (介入研究バイアス)
  企業にとって自社医薬品の臨床研究にて不利な結果が予想されれば、研究を実施しない
2)Publication bias(出版バイアス)
  企業にとって不利な結果で出れば、論文公表しない
3) Reporting bias(報告バイアス)
  企業にとって好都合な公表(効果は過大評価し、有害事象は過小評価)になりやすい。
利益相反(COI)は、研究倫理に関係しますか?
利益相反(COI)状態を適切に管理しないと、バイアスリスクにとどまらず、研究不正につながることもあります。医学系論文撤回の7割近くが研究不正(ねつ造、改ざん、盗用)によると報告されていますが、その原因の一つとして、深刻な利益相反(COI)状態が指摘されており、利益相反(COI)管理は研究倫理の一つと考えられます。
利益相反(COI)の管理は本来,研究者が所属する研究機関で行うものと理解していたが,学会の利益相反(COI)管理とはどのようなものですか?
学会所属の会員の多くは当該研究機関で医学系研究を実施しますが,得られた成果は各専門学会で発表されます。産学連携にて行われる医学系研究の実施とその発表という2つのステップがあり,それぞれにおいてバイアスリスクの発生が懸念されており、その防止策が求められます。従って、研究機関だけでなく,学会発表においても発表内容の中立性、公明性を確保するために発表者の利益相反(COI)状態の開示が求められると理解して下さい。研究機関では,当該医学系研究に携わる研究者全員が実施計画書と同時に利益相反(COI)自己申告書を研究機関の長へ提出し,当該研究機関において利益相反(COI)マネージメントを受けることが求められております(文部科学省・臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」、全国医学部長病院長会議「研究者主導臨床試験の実施にかかるガイドライン」を参照ください)。一方,日本内科学会の利益相反(COI)指針は,本学会が行うすべての事業を対象に,これを行う学会関係者の利益相反(COI)状態を自己申告によって開示させ,これを管理することにより学会関係者の社会的・倫理的立場や責務を明確にすることが目的です。
産学連携による医学系研究を行う上で、利益相反(COI)の観点から研究者が遵守すべきこととは何ですか?
医学系研究に携わる研究者としての義務と医療専門家である医師としての義務が同一研究者に課せられるが、これら二つの義務の対立が現実化した場合、医療専門職にある研究者は、研究対象者の人権擁護者としての立場を最優先し、研究対象者の利益のために最善を尽くすべきことは当然と考えられています。したがって、企業などの資金提供者の利益のために、またさらに自分の利益維持のために研究の方法、データの解析、結果の解釈を歪めて、誤った情報を提供するようなことが、絶対あってはならないし、社会的にも許されない行為と言えます。
医学系研究を行ったり、その成果を発表したりする場合、企業からの資金提供が悪いような印象を受けますが、、、
そうではありません。国策として科学技術基本計画が推進されており、企業から正当な報酬を受けることや、医学系研究の推進にむけて資金援助や役務提供を受けること自体は全く問題はありません。それらの事実をきちんと大学などの研究機関や、学会などの学術団体が透明性を確保して適切に把握し、疑義を招かないように管理して公表することが重要です。
産学連携により実施されるのは人間を対象とする医学系研究だけでなく、基礎研究でも広く行われています。基礎研究は利益相反(COI)申告の対象から除外してよいのでしょうか?(共通指針Ⅲに関連)
国の政策として、基礎研究で得られたシーズを臨床へ橋渡しをするトランスレーショナルリサーチが積極的に推進されており、当然に産学官の連携も活発化しております。このような背景の中でどこまでが基礎研究で、どこからが臨床研究であるかの定義は難しくなっております。基本的な考え方として、産学連携により行われている研究が基礎的なもの(前臨床試験、人体血液や生体サンプルの解析など)であっても、その成果が臨床での診療(予防法、診断法、治療法など)に影響を与え、資金提供をしている企業や営利団体の利害と関係する事が想定される場合には関係企業との利益相反(COI)状態を開示しておくことが望ましいと考えます。何故なら、産学連携による基礎研究成果に疑義が生じても、適正に申告されておれば、学会としても研究者の立場から適切に説明責任を果たすことが可能となるからです。
欧米の学会では、人間を対象とする医学系研究の利益相反(COI)自己申告と開示はどのようになっているのでしょうか?
多くの学会では、演題発表の時とか、学会雑誌へ発表する場合に利益相反(COI)自己申告と開示が義務付けけられています。
利益相反(COI)状態の開示を義務つけることは、企業との産学連携活動を阻害することにつながらないのでしょうか?
利益相反(COI)状態の開示は、あくまで研究者の自己申告に基づくものであり、産学連携活動を規制したり、個人への正当な報酬などを減じるための取り組みをしようとするものではありません。医学系研究を発展させるには、産学連携が必須であるがために、透明性、公明性を持って推進することが重要と考えており、適切に医学系研究が行われ、利害関係に影響されず、その成果が中立性を確保して適切に公表されることが、現場での医療の質の改善に結びつくと考えられています。
臨床研究の場合、研究者が利益相反(COI)状態を適切に開示すれば、どのようなメリットがあるのですか?
例えば、産学連携による医学系研究を実施した後に疑義があると指摘され、研究者が誹謗中傷された時に、あらかじめ自己申告により正しい情報が既に開示され、倫理審査を受けておれば、研究者本人および研究機関や学会は社会への説明責任を果たし、適切に対応し疑義を晴らすことが可能になります。
講演の時、演者は発表内容に関係する企業との利益相反(COI)状態を最初に開示しますが、何故ですか?
発表内容が特定企業寄りへとバイアスがかからないようにする自律的な効果があります。一方、発表の中立性、公明性は演者自身でなく、聴衆が客観的に判断することが大切であり、そのためには演者の利益相反(COI)状態を最初に知っておく必要があります。また、利益相反(COI)状態にある特定企業が複数あるのに、それらの開示をさっと流す演者がいたり、evidence-based medicineを重視せず、個人経験に基づく治療法を強調したりする演者がいますが、それらを是正する効果が期待できます。
製薬企業は、産学連携の透明性確保という視点でどのような対応をしているのですか?
製薬工業協会(略して、製薬協)は2011年に「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を公表し、会員企業が透明性に関する指針を策定し、研究機関および研究者に前年に支払った総額を項目立てにて2014年分から公開することを求めております。
人間を対象とした侵襲性のある臨床研究は、企業との関わりからどのように分類されますか? 最近、製薬協から公表された「医療用医薬品等を用いた研究者主導臨床研究の支援に関する指針」との違いを具体的に教えてください。
侵襲性のある臨床研究は,
1)研究者主導型臨床研究
2)企業が関わる共同研究
3)委託受託研究
の3つに分類されます(図).製薬企業の責任が明確なのは,共同研究と委託研究であり,対価が企業に与えられます.一方、2016年1月に製薬協が公表した「医療用医薬品等を用いた研究者の支援に関する指針」による臨床研究は、[第3版]医法研・JAPhMed研究者主導臨床研究 契約(サンプル)(URL:http://www.ihoken.or.jp/ whats_new/DATA/file_name2_71.pdf.)をモデルとした契約(内容的に、プロトコール審査による資金提供、研究結果報告義務、発表前の原稿提出と合理的なコメントの受け入れ、公表有無にかかわらず成果の企業利用など)を推奨しております。基本的には、分類2)産学連携共同研究とほとんど同じですが、研究結果に対する責任を企業が取らない点で異なっており、新しい形態の臨床研究支援と分類されます。しかし、契約内容に違法性はないものの、本学会の共通指針が示すVII.研究者責任者・研究代表者が回避すべき事項に抵触しており、研究者主導臨床研究としての信頼性を確保する視点から、成果発表に際して企業の関わりを詳細に公開することが求められています(共通指針 1.投稿論文のCOI管理)。

2.日本内科学会の利益相反(COI)指針に関して

日本内科学会利益相反(COI)指針は、日本医学会「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」に準拠して作成されているのですか?
利益相反(COI)管理の基本的な考え方を含めて基本的に整合性を持たせており、日本医学会の改定にも対応しています。
日本内科学会利益相反(COI)指針は、当該会員のみに適用されますか?(共通指針Ⅱに関連)
当学会の事業活動に参画する者(例えば、事務局職員、外部委員や招請講演を行う非会員)のすべてが対象となり、適用されます。
日本内科学会利益相反(COI)指針を守れば,法的責任は回避できますか?
本指針は,あくまでも学会の事業活動を公明性、中立性を担保に実施するために制定されたものであり,この指針に従ったからと言って,法的責任を回避することにはなりません。また,申告内容の真偽,申告外の利益取得,申告書の保管期限経過後に発生した問題等については法的責任を問われる可能性はあります。一般的に言えることですが,学会の指針や規則・細則には,その上位にある「法令」の適用を回避させる効力がないことをご理解下さい。
日本内科学会は、内科系関連学会との共通指針を目指していますが、何故ですか?
本学会の関連13学会は、本学会での認定医を取得後、専門医受験の資格が与えられる2階建ての制度となっていることから、複数の学会に重複している会員が多い事が想定されます。従って、会員にとって利益相反(COI)指針が内科関連学会の間で大きく異なる状況が発生すれば、混乱をきたす可能性を考慮して、本学会のCOI指針策定WGには内科関連学会からの委員が作業に加わり、利益相反(COI)共通指針を策定しました。各学会、それぞれに利益相反(COI)指針策定に関して策定経緯や事情もあり、9学会が共通指針として準用します(平成22年4月1日現在)。
日本内科学会は、いつから利益相反(COI)指針に則って会員のマネ-ジメントを行っていますか?
平成22年4月の学術講演会終了の翌日(4月12日)からですが、2年間は試行期間として運用し、その後、完全実施としています。
利益相反(COI)指針の意図するところは、何ですか?
日本内科学会の利益相反(COI)指針は、社会の理解と協力を得て、産学連携による医学系研究をより一層推進し、その成果を適切に公表するために、医学系研究に携わる会員などに依頼者である企業などとの経済的な利害関係等を一定要件のもとに開示させ、適切に管理することによって、研究の質と信頼性を確保し、研究対象者の人権と安全を守りながら、社会に対する説明責任を果たすことを目的とするものです。
日本内科学会の利益相反(COI)自己申告書は、医科系大学で進められている医学系研究の利益相反(COI)自己申告書と違うのでしょうか?
基本的には、同じ考え方であり、利益相反(COI)状態を判断する基準などはかなりの部分が同じです。それぞれの利益相反(COI)指針は、平成18年度の文部科学省「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」と平成20年度の厚生労働省「厚生労働科学研究における利益相反管理に関する指針」、平成27年2月公表の全国医学部長病院長会議「研究者主導臨床試験の実施にかかるガイドライン」、平成27年公表の日本医学会日本医学会「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」において基本的な考え方とマネージメントに関する提案が行われており、多くはそれらに準じた内容で策定されています。
学会発表,論文投稿,市民公開講座以外に対象となる学会の事業とは何でしょうか? (共通指針IIIに関連)
政府機関(厚生労働省など)や日本医師会などへの建議,諮問に対する答申,診療に関するガイドラインやマニュアルの作成などが含まれます。これらは本学会名で対応しますが,それらの事業活動に関わるのは理事や委員個人ですので,これらの方々の利益相反(COI)状態の管理と開示・公開を行っています。
申告すべき事項として、NPO法人や財団などの法人組織は、助成金などの研究費を受けた場合の対象として含まれるのでしょうか?(共通指針 IVに関連)
申告対象として、「企業・法人組織、営利を目的とする団体」と明記しており、本学会の事業に関連する企業だけでなく、公益性の高い財団などの法人も当然に含まれますので、基準額を超える場合には自己申告が必要です。また、財団の運営資金が特定企業から提供されておれば、当該企業の記載(例、◎◎財団法人(○○企業))が必要です。
利益相反(COI)指針に記載されている開示と公開の違いは?
本指針で云う開示は、本学会における会員および役員が自らの利益相反(COI)状態に関する情報を学会事務局,理事,評議員,作業部会委員,会員,学会参加者,学会誌購読者に対して提供するものと定義します。公開は本学会に関係しない外部の人々や,社会一般の人々に対して利益相反(COI)情報を提供するものと定義します。自己申告された利益相反(COI)情報のどの範囲を開示として扱い,どこまで公開するかは,対象者および対象事業によって異なります。
学会での発表や学会誌、診療ガイドラインへの掲載において,その自己申告範囲は所定の様式に従い,当該発表および論文に関連した企業・団体と発表者・投稿者との間の関係に限られます。また,申告行為自体は開示という解釈です。一方、学会役員などについてはより詳細な利益相反(COI)状態の自己申告が要求されます。また,学会役員などについては,一親等の親族および収入・財産を共有する者についても利益相反(COI)状態を申告する義務が課せられています。この自己申告は学会に対して開示されるものでありますが,基本的に公開されることを宣誓した上で提出しています。しかし,自己申告された内容の公開は,利益相反(COI)委員会で議論し,理事会が公開するべき範囲で行われることになります。最近の動向としては、研究者の利益相反(COI)状態の開示は社会への公開が原則になっています。
日本内科学会雑誌の座談会参加者は利益相反(COI)の申告が必要でしょうか? (共通指針Ⅷ-6-1)に関連)
座談会は診療面、特に診断、治療について討議がなされ、読者に影響力がありますので、雑誌に掲載される場合には参加者全員の利益相反(COI)状態の公開が必要です。
New England Journal of Medicine雑誌は、開示すべき利益相反(COI)の申告があった場合のみ掲載している。多くの申告がある場合“ある時のみ”の掲載した方がページ数も少なくて済むし、コスト削減にもなるのでは? 本誌は、どうされるのですか?
本学会では著者全員を利益相反(COI)申告対象としますが、あると回答した著者のみについて必要事項を記載する形式となっています。
筆頭著者以外の共著者に開示すべき利益相反(COI)の申告が発生した場合、雑誌記載方法はどうすべきですか?
所定の様式に従い、発表論文末尾の部分に項目別に記載することになります。
Internal Medicine(英文誌)の利益相反(COI)申告の金額提示は、殆どが米ドル($)表示のようですが、日本円(yen)の表示で統一するのでしょうか? 
Internal Medicineは、国内からの投稿が多いのでyenで良いと思うのですが、海外に発信する雑誌という名目で考えますと$が適当とも思えます。為替相場は変動しますので、投稿時点での日本円を基準にして自己申告して頂きます。
Internal Medicine雑誌への投稿に際して、自己申告書は日本語で記載してよろしいでしょうか?
英文誌ですので、所定の様式に従って必ず英語でご記入ください。
雑誌は、“投稿時から遡って過去1年以内での発表内容に関係する”となっていますが、投稿に2-3年かけているケースも多く、その為海外では2-3年が主流となっているようです。雑誌に関しては、海外の主流に合わせた“2年”とするか“投稿時から遡って発表内容に関係する”とした方が他学会にも世間的にも問題が起きないと思いますがいかがでしょうか? (共通指針Ⅲに関連)
最初の試行期間である2年間は過去1年としておりましたが、平成28年4月時点で、過去3年間の利益相反(COI)申告を義務化しています。
日本内科学会で利益相反(COI)自己申告を行った場合、関連の内科系学会における発表でもまた、新たな自己申告を行わなければならないのか?
学会ごとに自己申告を行う必要があります。
利益相反(COI)指針は施行された後、改定はなされないのですか? (共通指針
ⅩⅣに関連)
利益相反(COI)指針は、法律ではなく、社会の常識や良識によって判断されるものであり、当然、パートナーである製薬企業の動向や、社会の通念、倫理感が変化すれば、判断基準も変わってきますので、随時改訂して行くことが求められます。本学会の指針と細則も、平成28年3月に大幅改定となっております。今後も、数年ごとに見直しが行われます。

3.利益相反(COI)委員会の構成と役割について

本学会雑誌関係への利益相反(COI)申告に関する取り決めや見直しは利益相反(COI)委員会or編集委員会のどちらでしょうか?
利益相反(COI)委員会と雑誌編集委員会とが協議をして取り決めや見直しを行い、最終的には、理事会承認により実施されることになります。
利益相反(COI)委員会の構成はどのようになっていますか?
委員会は、委員長、副委員長、委員(外部含)若干名から構成されます。学会事務局からは、事務管理責任者が加わり、審査の仕分けや事務的な補助を行います。役員などの自己申告書を直接見ることが出来るのは、委員長、副委員長と事務管理責任者に限られます。審査が必要な場合には、匿名化した後に利益相反(COI)委員会で審議されます。もちろん、利益相反(COI)委員会委員と事務管理責任者の全員には守秘義務が課せられることは言うまでもありません。
役員等の利益相反(COI)自己申告書は提出された後、どのように取り扱われるのでしょうか?
提出された自己申告書は、原則として非公開とし、事務的には個人情報等の書類として学会事務局にて厳重に保管します。
利益相反(COI)委員会はどこに位置づけされているのでしょうか?
利益相反(COI)員会は、理事会並びに他の委員会とは独立した組織であり、理事長の諮問により、第三者的な立場で対応し、深刻な利益相反(COI)状態と判断された場合には適切にマネージメントするための対応を行う役割を担います(図参照)。
利益相反(COI)委員会と倫理委員会との役割の違いは?
日本医学会COI管理ガイドラインによると、利益相反(COI)委員会は会員や役員等から提出された利益相反(COI)自己申告書をもとに重大な利益相反(COI)状態を引き起こさないようにマネージメントをしたり、指導をする役目を担っており、利益相反(COI)状態に疑義が発生した場合にヒアリングなどにて対応することが重要な役割でアドバイザー的な存在です。一方、倫理委員会は、利益相反(COI)指針を遵守せず、社会的に本学会への重大な損失を与えるような事態が発生した場合に違反者への措置を検討し、理事長に答申する役割を担います。

4.利益相反(COI)申告とその申告書提出に関する質問

企業に所属する研究者は、研究成果を発表する場合、利益相反(COI)申告をすべきですか?(共通指針Ⅵに関連)
企業は本質的に営利を追求する立場であることから、企業所属の研究者は、所属する特定企業・部署名を演題名と一緒に明記するだけでよい。所定の利益相反(COI)申告書による開示は必要ありません。
臨床研究の実施や成果発表などで利益相反(COI)開示が求められるのは、研究機関に所属する研究者だけですか?
企業や営利団体との関連で、利益相反(COI)開示をしなければならないのは、原則として公益性の高い学術研究機関(例、大学)に所属する研究者が医学系研究に携わる場合に対象となります。企業や営利団体が運営する研究機関(例、○○製薬創薬研究所)に所属する研究者は利益相反(COI)開示の必要はありません。
利益相反(COI)自己申告書を開示することにより、どのようなメリットがあるのですか?
利益相反(COI)問題が提起されるのは、マスコミ等からの指摘や所属研究組織内部からの告発による場合が多いのが現状です。利益相反(COI)申告書の記載に虚偽がなければ、会員への誹謗中傷に対して学会は適切に対応することが出来ます。しかし、学会発表や機関誌へ発表において、利益相反(COI)自己申告書の開示内容に虚偽の記載が明らかになれば、会員に対して違反者としての措置を行うことになります。 (共通指針Ⅷ-6-2)およびⅩに関連)
利益相反(COI)自己申告書の出す意味が理解できない。研究者の収入を開示するのは、個人情報保護法に違反するのでは?
私たちのミッションは、医学系研究によって疾患の診断、治療、予防法などを開発し、出来るだけ早く患者さんの所に届けることですが、医学系研究には企業との産学連携活動が欠かせません。当然、医学系研究が活発な研究者(医師)には公的に私的にも研究費や講演料、株式収入などが入ってきます。その額があるレベルを超えると社会からの疑義や不信が発せられやすくなります。そのような問題を防ぐためには、研究機関や学会が、社会的な責務を担う各研究者に利益相反(COI)状態を適切に開示して頂き、深刻な状態にならないようにマネージメントしています。
配偶者や一親等の親族,収入・財産を共有するものの利益相反(COI)状態まで申告するように定めているが,これらの人が開示・公開を拒んだら,どうすべきですか?
配偶者などの利益相反(COI)状態が,申告者の学会事業活動に強く影響するのは一般に理解されているところです。論文投稿や学会役員等の就任時には,利益相反(COI)状態の開示・公開が求められます。ベンチャー企業の立ち上げや運営において配偶者を含めて親族が関わる場合も想定され、配偶者などの利益相反(COI)状態が深刻な結果,社会的・法的問題が生じた時に,これらを自己申告されていなかった当該申告者を,学会としては,残念ながら社会の批判に対して適切に対応することができません。また,学会は当該申告者を指針違反者として扱い,本指針で定められた措置をとらざるを得ません。以上の点を踏まえて配偶者や一親等の親族に理解を求めて情報提供をお願いすることが大切です。
利益相反(COI)自己申告書への記載は、すべて記載すべきですか? (共通指針Ⅴに関連)
自己申告書の各項目に沿って開示基準額が設定されていますので、有る、無しのチェックをすべての項目について行い、有る場合には、企業名等を記載してください。
利益相反(COI)自己申告書の項目ごとの基準額は、どのように決められているのか? (共通指針Ⅴに関連)
平成18年に出された文科省検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」と平成20年度の「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針」、並びに諸外国での基準を参考にして項目の設定並びに基準が設定されています。
株の保有やその他の報酬は,医学系研究に関連した企業・団体だけを申告するのですか?(共通指針Ⅴ-(2)、(9)に関連)
学会発表者や論文投稿者については,当該医学系研究に関連する企業・団体のものに限定されます。学会役員などについては,本学会が行う事業に関連する企業・団体に限定して自己申告していただくことになります。
私はある生物製剤に関する特許権を1000万円で製薬会社に譲渡しました。これは特許権使用料には当たらないと解釈して、申告しなくてよいのでしょうか。(共通指針Ⅴ-(3)に関連)
特許権の譲渡については、本指針Ⅴの(3)の項目に該当することから、申告が必要です。
私は会員ですが、製薬会社の株を30万円相当分持っています。また,先日,製薬会社の主催するセミナーで講演し、10万円の講演料を得ました。これら全てを自己申告しなければいけませんか?また,収入がある度に自己申告するのですか? (共通指針Ⅴ-(2)、(4)に関連)
具体的な申告の時期、申告方法,基準額は対象活動や対象者により異なり,本指針に定めています。会員の申告時期は,学会発表時,論文投稿時に、発表する研究内容に関係する企業・団体との利益相反(COI)状態を自己申告することが義務づけられています。一方、役員などの場合には、就任時と,その後1年に1回の自己申告が必要です。株は1年間の利益が100万円以上の場合,講演料は1企業につき年間50万円などの取り決めが細則に定められています。
1つの企業・組織・団体から支払われた研究費の総額は、年間100万円以上であれば申告となっていたが、2016年に改訂した利益相反(COI)指針では、年間総額500万円以上と変更になっていますが、その理由を教えてほしい。(共通指針Ⅴ-(6)に関連)
2014年12月に国の「人を対象とした医学系研究に関する倫理指針」の公表、2015年3月に全国医学部長病院長会議公表の研究者主導臨床試験の実施に関するガイドライン」が公表され、臨床研究にかかる環境基盤は倫理審査の強化、モニタリング・監査も強化されるなど、研究機関の長と研究者の責任がより一層明確化され、適切な管理体制が課せられています。一方、2016年1月に製薬協が「医療用医薬品等を用いた研究者の支援に関する指針」を公表し、研究者主導の臨床研究に対して寄附金支援ではなく、契約による研究支援金が研究機関に提供されることから、その額も大幅な増加が予想されます。また、製薬協の透明性ガイドラインも項目Aが2015年分から公開対象となっており、産学連携にかかる透明性も大きく改善されていることも変更の理由です。
私は製薬会社と関係しない出版社からの原稿料が50万円を超えますが、会員としての申告が必要でしょうか?(共通指針Ⅴ-(5)に関連)
原稿料で申告が必要なのは、原稿料の支払元が製薬会社や医療器具メーカーなどの営利企業である場合です。しかし、原稿料が出版社から支払われたとしても、関係する製薬会社などがスポンサーとして関係している場合には申告する必要があります。
ある製薬企業から,私の勤める病院に奨学寄附金400万円の入金があり,研究責任者名は私になっています。実際には,病院全体の研究費として多くの人が使用しており、物品を購入する場合、病院事務を通して経理がされています。このような奨学寄附金も私の利益相反(COI)状態として申告すべきでしょうか?(共通指針Ⅴ-(7)に関連)
奨学寄附金を受け入れた場合,本指針Ⅴの(7)にあたると解釈して,1企業から年間200万円以上であれば,研究担当者として受け入れた方が申告する必要があります。実際の研究費の使用者が誰であるかに関わらず、研究責任者の利益相反(COI)として申告してください。ただし、学会発表,論文投稿の研究内容が,奨学寄附金を納入した企業・団体と関係のない場合には開示する必要はありません。一方、学会役員などは本学会が行う事業に関連する企業・団体に関わるもの全てが自己申告の対象となり、利益相反(COI)状態の開示を求められます。
製薬企業からの奨学寄附金を臨床研究に使うことは出来ないのでしょうか?
我が国の場合、企業から提供される奨学寄附金は、企業と医師・研究者との癒着の温床になりやすいと指摘されてきたが、寄附金の授受に問題があるのではなく、その資金源と使途が公開されていなかったことに問題があったと言えます。奨学寄附金は、研究費や人件費が十分ではない我が国において、昭和38年に文部省令訓令の「奨学寄附金受入事務取扱規程」で定められて以来我が国の科学研究を支えてきた長い歴史があり、昭和59年には文部省国際学術局長・文部省大臣官房会計課長名で「奨学寄附金等外部資金の受け入れについて」の通知(文学助第二六八号)では「寄附の趣旨に沿って、教育研究上必要な使途については弾力的な運用と厳正なる会計処理」が義務つけられています。本制度は寄附者が原則その対価を求めない点に特色があり、企業からの寄附金支払いが不当な取引誘因や販売促進の手段に利用されたり、研究者自身が結果公表に際してバイアスをかけたりすることがないように、研究機関の長および研究者は奨学寄附金の受け入れを適切に開示し、企業との利害関係の一層の透明化と説明責任を果たさなければならないとされています。
よって、ある製薬企業から頂いた奨学寄附金を、その会社とは無関係の臨床研究に使用することは妨げられませんが、明確な説明責任があることをご理解ください。また、平成29年4月14日公布の臨床研究法では第三十二条で”医薬品等製造販売業者又はその特殊関係者は、特定臨床研究を実施する者に対し、当該医薬品等製造販売業者が製造販売をし、又はしようとする医薬品等を用いる特定臨床研究についての研究資金等の提供を行うときは、当該研究資金等の額及び内容、当該特定臨床研究の内容その他厚生労働省令で定める事項を定める契約を締結しなければならない”としており、本法の施行後は対象医薬品等の製造販売行う企業等から、契約を締結せずに奨学寄附金を用いて、当該薬剤の特定臨床研究を行うことは法律違反となります。
製薬協は2016年1月に製薬協が「医療用医薬品等を用いた研究者の支援に関する指針」を公表し、寄付金の提供はしないとしていますが、研究者主導の臨床研究に寄附金が全く使えないということでしょうか?
日本医学会公表のCOIマネージメントガイドラインには、研究者主導臨床研究の原資として、寄附金使用を使っても良いという見解となっています。寄付金提供は、企業や営利団体だけでなく、個人篤志家や利害関係のない団体、組織も想定できることから、それらを研究資金として受け入れる場合には、当然に説明責任が課せられます。そのためには、当該研究の実施計画書(プロトコール)に明確に記載し、倫理審査を受けること、論文公開する場合にも寄附金提供者の役割を明確に記載することを求めています。
寄附金の場合、申告・開示すべきとなっていますが、大学同窓会や個人からの寄附金も対象とすべきですか?(共通指針Ⅴ-(7)に関連)
研究内容に関係する発表の場合、開示する対象は、バイアスリスクの視点から、企業・法人組織や営利を目的とした団体と規定されておりますので、同窓会や個人からの寄附金については申告・開示の対象として適用されません。
私の所属機関では,企業からの奨学寄附金の入金額の10%が事務経費として差し引かれます。このため,企業から300万円の奨学寄附金をもらっても,研究者には270万円となります。この場合,奨学金の受け入れは、270万円と考えてよろしいでしょうか?(共通指針Ⅴ-(7),様式2Bに関連)
申告する奨学金の基準額は所属機関の事務経費を控除した額でなく,企業から入金された全額をもとに記載してください。従って,この例の場合、奨学金額は300万円と判定されます。
利益相反(COI)申告書の中で、奨学寄附金(奨励寄附金など)の項目がありますが、教室(医局或いは講座など)の代表リーダー(教授、准教授など)が受けている場合、どうすべきでしょうか? (共通指針Ⅴ-(7)に関連)
10数大学について奨学寄附金受け入れの方式を調べた所、①講座・分野宛にしている場合と、②研究者個人にしている場合、③どちらでも可能としている場合がありました。学会での演題発表については、申告者が所属する研究室単位が同じであるとか、共同研究のために研究費の使途を一にしている場合、利益相反(COI)状態にあるとして基準額超えていれば、申告してください。役員の場合も同様で、部局内の研究者個人が研究費の提供を受けているが、共同研究を行う立場であれば、申告する方がベターです。しかし、同じ部局内の研究者が全く独立して研究をしている場合には必要はありません。
寄附講座の多くは企業の寄附資金によって運営されておりますが,寄附講座所属の教員や職員については利益相反(COI)申告をどのようにするのですか? (共通指針Ⅴ-(8)、様式2Bに関連)
企業や営利団体から提供される寄附講座は深刻な利益相反(COI)状態が生じる可能性が高いことから、所属する教員などは所定の様式に従い申告する必要があります。
寄附講座に所属する会員は、講演会などでの所属、職名はどのように表示すべきですか?
最近、産学連携活動の一つとして、大学の部局内に企業などからの提供資金によって寄附講座が数多く設置されている。寄附講座に所属する会員は、発表に際しての職名は所属施設・機関で使われる正式名称(特任教授、特命教授など)を記載し、寄附講座については資金提供元の企業名を謝辞に明記すべきである。
寄附講座の教員が論文発表をする場合、資金提供元の企業名をどの様に記載すべきでしょうか?
企業などからの資金提供により設置された寄附講座に所属する会員は、論文発表に際しての和文例は「謝辞:XXX寄附講座は、YYY製薬の寄附金にて支援されている。」、英文例は「Acknowledgements: Department of XXX is an endowment department, supported with an unrestricted grant from YYY.」などの記載がなされるべきである。
10社以上からの共同出資によって寄附講座が設立されている場合、それらを全て記載すべきですか?
複数の企業などから寄附金として資金提供されている場合には、1社あたり寄附金額 100万円以上であれば、該当する企業名をすべて記載し、透明化を図ることが求められる。
最近、地域医療の充実を図るために、県や市町村が寄附金を提供して寄附講座が研究機関に数多く設置されていますが、どのような利益相反(COI)マネージメントがなされるべきでしょうか?
当該の寄附講座に所属する研究者は、企業や営利団体と関係する訳ではないので、利益相反(COI)申告をする必要はありません。
症例報告も、奨学寄附金を含めて利益相反(COI)開示はすべきでしょうか?
症例報告における利益相反(COI)状況の申告・開示については、発表内容がある特定の企業の利益に結び付く場合に奨学寄附金などの提供を受けていた場合にはなされるべきですが、学術的に症例の病因、病態、診断、治療などに関する発表内容であれば、開示すべき利益相反(COI)はないで良い。
「研究とは直接関係のない,その他の報酬」を申告するように義務づけられていますが,製薬会社が提供するテレビ番組のクイズで海外旅行が当たっても申告するのですか?(共通指針Ⅴ-(9)に関連)
クイズや抽選で当たったものは景品であって報酬ではありません。申告が義務づけられているのは「報酬」であり,「報酬」とはなんらかの労力に対する見返りとして支払われるものです。従って,景品は申告対象ではありません。本指針Ⅴの(9)に当たる例としては,ある医師が特定の薬をよく処方することから,その薬を販売する企業が謝礼の意味でUSBフラッシュメモリーを医師に渡すことなどが該当します。極端な場合には贈賄行為となり刑事罰の対象となりますので,本指針で扱うものではありません。本指針Ⅴの(1)~(8)に該当しないが,利益相反(COI)状態となる可能性のあるものを拾い上げるために(9)
を設けております。施行細則に1つの企業・団体から受けた報酬が5万円以上を申告することとしております。
私は日本内科学会の生涯教育講演会での講演を依頼されました。このような場合も利益相反(COI)状態を開示しなければならないのでしょうか? (共通指針Ⅲに関連)
本学会の事業活動である生涯教育講演会や内科学の展望、また専門医部会が主催する『セミナー』などは,多くの場合その分野の専門家が招待講演の演者となりますが,これを受講する者への影響は大きいことから、所定の様式に従い、利益相反(COI)状態を発表スライド中に開示して頂くことになります。
日本内科学会の利益相反(COI)自己申告書にある基準は、今後変わらないのか? (共通指針Ⅴ、ⅩⅣに関連)
申告するための項目とか基準額等は、当然、社会的な要因や時代の変化に伴い考え方や社会からの見方も変化していくことが予想され、その時代にあった基準に変更していくことが求められます。今回の利益相反(COI)指針は、「社会的要因や産学連携に関する指針、法令の改正、整備ならびに医療及び研究をめぐる諸条件に適合させるためには、定期的に見直しを行い、改正することができる。」と、XⅣ.指針の改正として明記されています。
利益相反(COI)申告の対象期間が過去1年間から3年間に延長されています。開示項目の規準額はその年(1月―12月)の総額となっていますが、変更はあるのでしょうか?
年ごとに設定されている基準額の開示ルールは同じです。役員就任の場合には、該当する企業があれば、それらを3年間分、各年ごとに列記して開示すると理解ください。例として、2012年 奨学寄附金:A製薬  2013年 奨学寄附金;A製薬、B製薬、 2014年 奨学寄附金:A製薬、C製薬 の場合、改訂後、過去3年間(2012‐2014年)の開示方法として、奨学寄附金:A製薬、B製薬、C製薬 となります。 
一方、講演などの発表時は、演題発表内容に関係して、発表者全員が過去3年間において利益相反(COI)状態にある企業名を項目ごとに基準額以上であれば、まとめて申告開示することになります。例として、発表者全員、過去3年間を一括して
講演料:A製薬、B製薬、原稿料:C製薬、奨学寄付金:B製薬、C製薬となります。
過去3年間の利益相反(COI)状態の自己申告について、A製薬との契約による受託研究にて医学系研究を行ったが、論文作成が契約後4年目と遅れましたが、3年を過ぎているのでA製薬の記載を論文末尾にする必要はないのでしょうか?
医学系研究の研究資金をA製薬から契約のもとに提供されて実施している場合、刊行物での公表が遅れても原則的にfunding source(資金源)は明記しなければならないという判断です。
日本内科学会の利益相反(COI)指針は、支部での地方会にも適用されるか?(共通指針Ⅲに関連)
一般社団法人として、日本内科学会の各支部の運営も一体となっておりますので、支部ごとの地方会における発表も本指針が適用されます。
内科学会で演題発表をしようとすれば,利益相反(COI)状態の報告について具体的に,何をすればいいのでしょうか?(共通指針Ⅲ、Ⅷに関連)
学会での発表については,発表者全員を対象に、発表演題に関係する企業などとの利益相反(COI)状態の開示すが必要で、発表代表者が責任を持ちます。開示は当該発表演題に関連した企業との金銭的な利益相反(COI)状態に限定されます。臨床的に影響力のある医学系研究の試験結果については論文として投稿され、著者のみならず,全共著者の利益相反(COI)状態の開示が必要です。一例を示します。(様式1)
利企業や団体などから示された基準をはるかに超える利益相反(COI)状態があった場合、学術講演会の発表は出来ないのですか?
高額の個人収入を得ているからと言って、講演が出来ないことはありません。発表の時に、適切に利益相反(COI)状態を自ら開示することによって、その講演内容の評価は参加している聴衆に判断を委ねることとなります。当然、当該の講演者は、発表内容の中立性、公明性が求められることとなり、このような対応が利益相反(COI)マネージメントの基本と理解してください。
学会で演題発表する場合、いつ発表者の利益相反(COI)状態を申告するのですか?
発表する演題の抄録をwebsiteにて登録する時に、利益相反(COI)自己申告書に必要事項をすべて記入して頂かないと演題受付が終了しない仕組みとなっています。
非会員が本学会の特別講演、シンポジウムなどに招待された場合、本指針は適用されますか? (共通指針Ⅱ、Ⅷ-(5)に関連)
本学会の事業に参加することから、会員の場合と同様に、発表時に利益相反(COI)状態の開示が求められる。
企業所属の社員が大学・研究所へ非常勤の形(特任、非常勤講師など)で所属し、複数の所属名・職名がある場合に、研究結果を発表する時、どのように所属を記載するべきか?(共通指針Ⅵ-(5)に関連)
利益相反(COI)開示法として、特定企業に雇用されて主たる給与が支払われておれば、企業名・職名も併せて開示しなければならない。
  例、日本太郎1) ○○大学医学部1) ○○製薬 ○○部1)
企業の従業員Aが、研究者に臨床試験をB大学教授に働きかけ、ウエブでの症例データ集計、解析などの支援をしてきたが、論文発表の時点で、従業員Aがある大学の研究所の研究員に移籍した場合、当該の臨床試験の成果公表時に、移籍した大学名の所属だけの記載でよいか? (共通指針Ⅵ-(6)に関連)
質問として、①B大学教授は、臨床研究実施計画書に従業員Aの役割と所属を書いていたか? 臨床試験の財源はどこからかの記載はあったか? 複数年にわたっているが、倫理審査は更新の度に行われていたか? 倫理資産記録は保存されているか? ②論文公表については、代表者B大学教授は、従業員Aの著者資格としてどのような貢献と認識していたか? 当然、会社名の記載が利益相反(COI)マネージメントの視点から求められるが、その認識はあったか? などが重要である。取るべき対応としては、臨床試験実施当時の所属先(論文公表前の5年間が対象))と現在との2つの所属を記載すべきである。
学術講演会などの昼食時や、夕方に開催される企業主催のランチョンセミナー、イーブニングセミナー(シンポジウム)などが開催された場合、発表者には本指針が適用されますか?(共通指針Ⅲに関連)
本指針の「Ⅲ.対象者となる活動」に記載されている様に、それらのセミナーは本学会の事業に含まれ、学会員を対象に行われることから、発表者は利益相反(COI)状態をスライドにて開示する義務を負うことになります。
本指針に従えば,本学会事務局に膨大な量の個人情報が蓄積されることになり,それらはいつまで保管されるのでしょうか。
雑誌や学会での発表者の利益相反(COI)情報は,論文中や発表時にスライドまたはポスターにて開示されることで完結しますが、学会発表のための抄録登録時あるいは本学会雑誌への論文投稿時に提出される利益相反(COI)自己申告書は提出の日から2年間、理事長の監督下に法人の事務所で厳重に保管し、その後は廃棄します。
Internal Medicine,日本内科学会雑誌への投稿論文で明らかにする利益相反(COI)状態の期間は,いつからいつまでですか。
投稿日が7月10日の場合は,期間を1月1日から12月31日として投稿時点の前の年から過去3年間に発生した事項について自己申告して下さい。論文がreviseとなった場合は,期間を1月1日から12月31日として最終的に受理された日の前の年から過去3年間に発生した事項について自己申告書を改訂して自己申告して下さい。
Internal Medicine誌に投稿するときFormはどのように書けばよいのですか?
投稿論文については共著者を含めた全著者の利益相反(COI)状態を開示します。その内容は当該論文に関係した企業・団体などとの利益相反(COI)状態に限定されます。注意すべき事は,筆頭著者(本人)のみならず,本人の配偶者,一親等の親族,または収入・財産を共有する者についても申告しなければならない点です。
和文の日本内科学会雑誌と英文のInternal Medicine誌とでは、利益相反(COI)に関する自己申告の内容が一部異なっていますが、どうしてですか?
Internal Medicine誌には数多くの論文投稿が海外からなされているが、産学連携の方法は日本と欧米では一部異なっている。特に、企業からの奨学寄附金と寄附講座の提供は制度的に日本独自の方式と考えられることから、Internal Medicine誌の場合にはそれらの項目を利益相反(COI)申告書から除外しています。
欧米の代表的な雑誌では、投稿時に提出する利益相反(COI)申告書を標準化する動きがありますが、日本内科学会はどの様に対応する予定ですか?
New England Journal of MedicineやLancetなどの編集責任者が集い国際委員会(International Committee for Medical Journal Editors (ICMJE))を設置し、共通の利益相反(COI)開示様式を提案し試行しております。日本内科学会も将来的には国際的な標準化を視野に取り組んでいく予定です。
医学雑誌編集者中央委員会(International Committee for Medical Journal Editors, ICMJEと略す)が2013年に ICMJE Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing, and Publication of Scholarly Work in Medical Journalを公表していますが、利益相反(COI)開示についての動向を教えてください。
論文撤回の約6割あまりが研究不正によるとされており、深刻な利益相反(COI)状態もその要因の一つとされています。その防止策として、著者資格を厳格にし、すべての著者を対象に、研究資金、医薬品・機器提、労務役務などの提供者があれば、具体的な役割について詳細な情報の開示を論文発表時に求めている。また、研究不正のある発表論文にかかる責任は雑誌発行者でなく、研究機関と研究者(特に、corresponding author)が取るべきとする姿勢を明確にしている。
役員、学術講演会長、各種委員会のすべての委員長、特定の委員、学会従業員などが利益相反(COI)申告書を提出する場合の対象となる期間はいつからいつまでになるのでしょうか?(共通指針Ⅷ-2に関連)
税務署への自己申告の対象となる期間は、毎年1月1日から12月末となっており、データとして整理ができていると思われるので、当学会も就任するに際して前の年から過去3年間を対象期間として利益相反(COI)状態の申告を義務つけております。
役員などで理事長宛に利益相反(COI)自己申告書を提出した後に既定の基準を超える個人的な収入があった場合、どのように対応すべきでしょうか?
既に提出している利益相反(COI)自己申告書への追加・修正という形で、報告すべき利益相反(COI)基準を超えた日から8週以内にすべきであると定められています。あくまで、自己申告制ですので、常日頃から自らの利益相反(COI)状態をチェックしておくことが肝要と言えます。
学会の場合は,会長、理事長、理事・監事の就任日,委員長就任日,委員就任日が,それぞれ異なっています。同一人物が理事となり,ある委員会の委員長となり,また別の特定委員会委員(共通指針Ⅱ-(3)の定義を参照)を兼ねる場合は,3回も申請書を書かねばならないのですか?(共通指針Ⅷ-2,様式3に関連)
理事,委員長,特定委員会委員などを兼任される場合は,就任が最も早いものについて,就任時に所定の様式に従った利益相反(COI)自己申告が必要です。その後、委員長や特定委員会委員になっても,個別に申告する必要はありません。ただし,例えば,理事就任後、ある委員会の委員長に就任する間に,製薬会社から奨学寄附金(例、1,000万円)を獲得された場合は,細則第4条に「在任中に新たな利益相反(COI)状態が発生した場合は、8週以内に様式3によって報告する義務を負うものとする。」という規定がありますので,新たに発生した利益相反(COI)状態の分のみ様式3を用いて,申告していただく必要があります。
役員の場合、企業からの金銭授受が基準額以上にあれば、自己申告書にすべて記載すべきですか? (共通指針Ⅷ-2に関連)
自己申告書にすべての企業を記載しても記載しすぎることにはなりません。申告書は学会事務局に厳重に保管されており、申告内容が特定の者以外に開示されたり、漏れたりすることはありません。故に、自己申告書に記載しすぎると言ったことはありませんので、すべての企業を記載してください。
理事、各種委員会委員長、委員などは、利益相反(COI)自己申告書をいつ提出するのか? (細則 第4条 第1項に関連)
就任する時点で自己申告書を提出する義務を負う。申告がない場合には、就任は承認されない。
役員などが自己申告書提出後に、新たに基準額を超える利益相反(COI)状態が発生した場合はどのように対応すべきですか? (共通指針Ⅷ-2に関連)
新たに発生した時点から、8週以内に修正した自己申告書(様式3)を学会理事長あてに提出する義務が生じます。
利益相反(COI)状態の回避について「当該医学系研究を計画・実行する上で必要不可欠の人材であり,かつ当該医学系研究が国際的にも極めて重要な意義をもつような場合には,当該医学系研究の試験責任医師に就任することは可能とする。」という例外規定を設けることは,本指針の理念を弱めることになりませんか? (共通指針Ⅶ-2に関連)
本指針の目指すところは,研究者に利益相反(COI)状態の回避を強制することではなく,また,利益相反(COI)状態が強い研究者に対して医学系研究を制限することでもありません。社会にとって有意義で,重要な医学系研究を推進し、成果を得ることが大切でありますが、活発に医学系研究を実施する研究者ほど,利益相反(COI)状態が深刻化するのが一般的です。上記のような例外規定を設けることで,有能な研究者が医学系研究に関わる道を開くことが大切と考えており、何らかのマネージメントを行うことにより、透明性、中立性が担保出来れば可能であるとの判断です。本指針では学会の管轄外で行われる医学系研究の実施については,会員の所属機関の利益相反(COI)指針に従うべきであり、学会としての判断を示すにとどめております。(共通指針Ⅷ-6-1)-(3)に関連)
ある特定の企業A社から、講演料、寄附金などで高額の収入を得ている場合、A社の薬剤の診療ガイドラインを策定する委員会の委員長になることが出来るのか?
社会的な視点からその収入額が非常に高いと考えられる場合には、委員長になるべきでなく、委員として参加することは可能である。しかし、深刻な利益相反(COI)状態にあると思われる場合には、深刻な状態を緩和するための措置(委員の辞退、定期的な報告義務、監査など)を取ることも一つの解決策と言える。
ある保険会社の顧問をしているが、これも自己申告するのか? (共通指針Ⅴ-(1)に関連)
内科学会の事業活動を担う役員の場合、当該保険会社との間に利益相反(COI)状態が発生しないと考えられるのであれば、申告の必要はありません。当該の保険会社に関係する委員会委員長に就任する場合にはマネージメントが必要になる可能性があり、そのような場合に自己申告が求められます。

5.利益相反(COI)マネージメント(管理)の実際について

特定企業などから多額の報酬や助成支援金を得ている研究者が当該企業の医薬品を使って介入研究を実施する場合、重大な利益相反(COI)状態にあると思われるが、具体的にどのようなマネージメントをすべきですか?(共通指針Ⅵに関連)
申告な利益相反(COI)状態が予想される研究者であっても、研究機関や学会の長が、研究者に開示させた利益相反(COI)状態について疑念を持たれないように利益相反(COI)指針に従って予め管理しておくことが大切である。参加する健常者、患者などの研究対象者が、そのことを十分に理解し、熟知したうえで参加し、かつ研究者が研究の方法、データの解析、結果の解釈などを行う過程で、バイアスリスクを回避できる仕組みを作っておけば、そのような医学系研究も社会的にも容認されると考えられます。例えば、①研究代表者ではなく、分担研究者として参画させる、②研究者代表者としての参画には、定期的な利益相反(COI)状態の報告とか直接ヒアリングの実施などを行う。
利益相反(COI)マネージメントが必要な役員(理事、委員など)とは具体的にどのような役を担う者が対象ですか?
役員が、理事長、学会長、学会誌編集会議委員、または倫理・医療安全委員会の委員長などに就任する場合があたります。なお、診療ガイドライン策定に関わる委員の選考については、「日本医学会診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス2017」に記載されています。
製薬企業から多額の研究費や奨学寄附金を貰っていれば、自分の専門領域で特殊な治療に関する医学系研究を行う場合、Principal Investigator (PI)(責任医師)にはなれないのでしょうか?
医学系研究においては、「余人をもって代え難し」ということがしばしばあります。もちろん、すべての医師を排除するものではありません。産学連携による医学系研究の推進が第一でありますので、どのように深刻な利益相反(COI)状態をマネージメントすれば、可能かという点をまず考えることが大切です。方法として、責任医師になってもらうが、定期的に報告書の提出とか、ヒアリングを随時行うなどの方策を使って対応することが可能です。
学術集会などで、発表者が基準以上の利益相反(COI)状態があるにも関わらず、利益相反(COI)開示を適切に行わなかったり、虚偽の申告をした会員が、社会から非難された場合、学会はどう対応するのか?
学会発表でもし開示しなくても、それですぐ措置を取るということはありません。しかし、発表者の利益相反(COI)状態が深刻な社会問題となるような重大案件では、個人の問題として社会へ向けての説明責任を果たし対応して頂くことになります。そして、その事が日本内科学会の社会的な信頼性とか、権威を傷つける結果になった場合には学会としてそれに応じた措置・処分を本学会の定款に従い検討することになると予想されます。
会員から、特定の役員について、企業・団体から提供される寄附金額はいくらかとの問い合わせがあった場合、その詳細を開示するのか?
学会としての対応は、理事会で最終判断を行い、利益相反(COI)指針細則に規定されている基準額以上の寄附金があったかどうかの情報のみ提供し、金額については原則として開示しない。
非会員(マスコミなど)から、特定の役員の利益相反(COI)自己申告書の開示請求が法的になされた場合、どう対応するのか?(共通指針Ⅸに関連)
学会としては、役員の個人情報の保護を基本に理事会で対応については最終判断を行う。事例によっては、顧問弁護士と相談の上、法的に対応することも想定される。
ある役員が自己申告書の記載内容において虚偽の記載により、本学会の社会的な信頼性を著しく損なった場合、どの様な対応を行うのか?
理事長は理事会の審議を図ると共に、調査委員会を立ち上げて事実関係を含めての真相解明を行い、自己申告違反が検証されれば、その程度に応じて本学会の定款が定める手順により処分されることとなります

(上記のQ&Aについては、日本医学会 医学系研究にかかるCOI管理ガイドラインのQ/Aを一部引用している)

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