教育セミナーは当日のみの開催で、アーカイブ配信はありません。
web参加で参加単位取得をご希望の先生方は、当日オンタイムでご視聴ください。
第14回内科臨床学習セミナー
テーマ『遺伝医療の進歩』
内科医として、一般診療で遭遇する臨床症状に対応するノウハウを勉強することを主旨としている会です。専門領域が異なる先生方から、症例提示と講義をしていただきます。また、司会者、企画担当者を加えて質疑応答を行います。総合内科専門医だけでなく、認定内科医、あるいは臨床研修医などすべての方々が参加可能になっておりますので、奮ってご参加ください。
開催日 | 2024年2月10日(土) 13時30分~15時 |
開催形式 | ハイブリッド開催(北海道大学臨床大講堂(2階)およびLive配信) |
企画 | 専門医部会北海道支部 |
企画担当者 | 札幌医科大学呼吸器・アレルギー内科学講座 黒沼 幸治 |
参加費 | 無料。ただし教育セミナーだけの参加はできません。 |
参加方法 | Web参加の場合は、第300回北海道地方会への事前参加登録が必要になります。 ※お住まいの地域に関係なくご参加いただけます。 |
認定更新単位設定 | 【認定内科医・総合内科専門医】2単位 ※視聴時間は任意といたしますが、60分以上のご参加をお願いいたします。参加登録をしただけでは取得できませんのでご注意ください。 入退場時間記録について |
【内科専門医】[出席単位]:なし [視聴単位]:1単位/1時間 ※視聴時間が問われます 「内科専門医」資格の認定と更新についてのご案内 |
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その他 | 単位がパーソナルウェブに反映まで1か月程度かかります 参加状況確認後、事務局にて自動付与いたします。別途申請等を行う必要はありません |
プログラム
企画担当者:札幌医科大学呼吸器・アレルギー内科学講座 千葉 弘文司 会:札幌医科大学呼吸器・アレルギー内科学講座 黒沼 幸治
- 遺伝カウンセリングと遺伝診療 ~遠隔遺伝カウンセリングの現状~
札幌医科大学遺伝子診療科 室田 文子
遺伝診療は、出生前や出生時に診断される先天性疾患に対応する産婦人科や小児科が主体であった。しかし、次世代シークエンサーの開発による解析技術の進歩によって疾患の遺伝学的背景の解明と知見の蓄積が進み、遺伝性疾患の診断や治療・遺伝情報に基づいた個別化医療が飛躍的に発展している。現在、ほとんどすべての科で遺伝情報を利用した診療が開始されつつあり内科的疾患も例外ではない。
遺伝診療にとって遺伝カウンセリングは重要な医療行為の一つであるが、遺伝カウンセリングを提供できる施設や専門家が少ないことから遺伝カウンセリングへのアクセスが難しいことが問題の一つとなっている。また医療従事者であっても、遺伝カウンセリングという行為に対しての十分な理解がえられていない現状も散見される。
新型コロナウイルス感染症による新しい生活様式への適応が進むことで遠隔診療の導入が盛んとなり、遠隔遺伝カウンセリングが注目されるようになった。
遺伝診療において遠隔遺伝カウンセリングは、難病領域の保険収載された遺伝学的検査の実施に際してのみ保険診療で可能である。それ以外の遺伝学的検査を伴わない遺伝カウンセリングや保険未収載の遺伝学的検査に伴うものは自費診療とされている。
札幌医科大学遺伝子診療科では2021年10月からDr to Pt の遠隔遺伝カウンセリング(自費診療)を開始し、2022年10月からは地域の医療機関と当院をオンラインでつないだ遠隔連携遺伝カウンセリング(Dr to Pt with Dr)を開始している。まだ症例数は少ないが、北海道という広大な医療圏の中の限られた人材による遺伝診療において打開策になりうるものと考えている。その為に地域の医療機関と協同して遠隔遺伝カウンセリングを普及していく必要がある。
今後網羅的なゲノム解析が遺伝学的検査の主流となり、遺伝診療はさらに医療において普遍的になると予想され遺伝カウンセリングの必要性も増えることとなる。
全ての医師・医療職が、遺伝カウンセリングについて概念を知り、必要に応じて提供あるいは遺伝カウンセリングの可能な施設に紹介できるよう、またその為のアクセスが容易となっていることが重要である。
今回、遺伝診療における遺伝カウンセリングについて、その適応や紹介のタイミング、遠隔遺伝カウンセリングを含む遺伝診療の現状についてご紹介したい。 - “診療を変える,未来が変わる”日常臨床に役立つ心筋症遺伝子解析
札幌医科大学医学部循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座 矢野 俊之
“診断しても治療法がないので・・・”
20年以上前はこうして多くの心筋症が見逃されてきた。心筋症は、“心機能障害を伴う心筋疾患”と定義される疾患群である。特発性(原発性)心筋症である肥大型心筋症、拡張型心筋症、不整脈原性(右室)心筋症に加え、全身性疾患の心病変として二次性心筋症が存在することから全ての内科医が念頭に置くべき疾患である。心筋症の約半数は単一遺伝子の異常に起因する。遺伝性ATTRアミロイドーシスのsiRNA治療、ファブリー病の酵素補充療法・シャペロン治療など遺伝性二次性心筋症は原因治療ができる疾患に様変わりし、今や診断しなくてはいけない疾患である。肥大型心筋症・拡張型心筋症においても遺伝学的解析は臨床経過、表現型、そして予後の予測に重要な役割を果たす。しかし、多くは保険診療として行えるにもかかわらず十分に応用されていない。 - 肺癌遺伝子検査と個別化医療の最前線
旭川医科大学内科学講座呼吸器・脳神経学分野 佐々木高明
近年、非小細胞肺癌の治療戦略の中核となるドライバー遺伝子の同定や、その遺伝子に対する標的治療が大きく進展し、癌治療における個別化医療の実現が大きく前進し、患者の予後改善に寄与している。本講演では、非小細胞肺癌に関連する主要なドライバー遺伝子、具体的にはEGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、RET融合遺伝子、NTRK1-3融合遺伝子、MET遺伝子変異、HER2遺伝子変異、KRAS遺伝子変異、BRAF遺伝子変異について、その開発経緯と対応する治療薬の現状について解説する。さらに、マルチがん遺伝子検査法とコンパニオン診断薬の相互関係、標準治療終了後のがんゲノム医療の最新動向と課題についても解説する。
今後の展望として、現在期待されている新たなドライバー遺伝子変異に加え、非ドライバー遺伝子変異、特にMDM2やp53に対する新たな治療薬の開発について概説する。さらに、人工知能技術を用いたがんデータ解析の進展、Oncogenicityの予測、より個別化された治療法など、今後の医療の新たな方向性についても解説する。 - 神経・筋疾患に関する遺伝医療
北海道大学神経内科 松島 理明
これまで神経内科領域の疾患は、いわゆる「難病」が多く、「わからない」「治らない」「よくならない」などと言われてきた時期が長い。依然として根本的治療方法が未確立の遺伝性神経・筋疾患はあり、ハンチントン病や遺伝性脊髄小脳変性症がその代表例である。これらの疾患は徐々に運動機能障害等が進行し、日常生活動作が低下する。現時点でそれを抑制する方法はない。家族歴のある例では未発症者が遺伝学的検査を希望して来院する場合もあるが、その際には慎重に検討を進める必要がある。一方で、近年は様々な神経・筋疾患の病態機序の解明が進みつつある。遺伝性神経・筋疾患でも一部で新たな疾患修飾療法が実用化されている。例えば、遺伝性ATTRアミロイドーシスや脊髄性筋萎縮症、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのように、かつては「不治の病」であった疾患に対して、核酸医薬による治療可能となってきた。このような場合には、早期診断・早期治療導入が重要であり、遺伝学的検査による診断が有用である。本講演では、神経・筋疾患の遺伝医療の特徴を概説しつつ、治療方法が未確立あるいは確立しつつあるものについて自験例も交えて紹介する。