専門医部会教育セミナー
専門医部会教育セミナー | |
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開催日 | 2015年6月13日(土) 11時45分~12時45分 |
会場 | 長野市若里市民文化ホール 長野市若里3-22-2 TEL:026-223-2223 |
世話人 | 信州大学内科学第一 山本 洋 |
詳細は【ICカード(内科学会会員証)による単位登録について】をご参照ください
参加について
- ■参加費
- 無料。事前申し込みも不要です。
総合内科専門医に限らず、どなたでもお気軽にご参加ください。
- ■認定更新単位
- 2単位
内容
- ■症例提示
- 北アルプス医療センター あづみ病院 循環器内科 富田 威
- ■内容
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心房細動が原因となる心原性脳塞栓症はラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞と比較し重篤な脳梗塞をきたし、初回発作での死亡率は約20%と報告されている。故に、まずは予防が重要である。
脳梗塞予防薬としてワルファリンが長年使用されてきたが、50年歴史のあるワルファリンがその地位を確立し浸透したのは2000年代に入ってからである。しかし、ワルファリンは用量の個体差や食生活による効果の変動など使用にはいくつかの注意点があるため、その使用を躊躇し適応症例に十分処方されない、予防効果を期待できないアスピリンで代用するといった問題があった。
これらの問題が解決されるとことを期待され4年前に新規経口抗凝固薬(NOAC)が登場した。ダビガドランはRelay試験においてCHADS2スコア1点の症例における脳卒中予防効果と安全性が示され、ワルファリンではCHADS2スコア2点以上での適応を1点に拡大した。NOACは4剤ともワルファリンと比較し予防効果が同等もしくは高く、また一定用量での効果の安定性など処方する側としても使い勝手の良い薬剤である。しかし、別の問題が明らかになった。腎機能低下例に対する使用の適否と用量設定である。腎排泄であるNOACは腎機能低下例では出血のリスクが上昇する。心房細動の多くは高齢者であり、潜在的に腎機能低下を有する。そのため使用前に腎機能評価を確実に行い、他の出血リスクの確認が必須である。さらに、改善すべき課題が残っている。脳梗塞発症時に心房細動を有した症例での抗凝固薬導入の割合は約20-50%である。脳塞栓症発症前の無症候性心房細動例に対してどのように適切な検査と抗凝固療法を徹底するかが残る大きな課題である。
今後も医療者のみならず一般市民への啓発活動を通して抗凝固療法の適正使用を推進すべきと考える。