第4回 内科臨床学習セミナー
テーマ:『内科疾患アップデート~2018年』
内科医として、一般診療で遭遇する臨床症状に対応するノウハウを勉強することを主旨としている会です。専門領域の最新の内容について講義をしていただきます。質疑応答は行いません。
総合内科専門医だけでなく、認定内科医、あるいは臨床研修医などすべての方々が参加可能になっておりますので、奮ってご参加ください。
開催日 | 2018年7月7日(土) 14時30分~16時 |
会場 | 北海道大学臨床講義棟 2階 臨床大講堂(地方会A会場) 札幌市北区北15条西7丁目 TEL:011-716-2111 |
企画 | 専門医部会北海道支部 |
世話人 | 手稲渓仁会病院呼吸器内科 山田 玄 |
参加について | 参加費:無料 / 受付時間:14時30分~15時50分 ◆事前予約不要でお住まいの地域に関係なくご参加いただけます |
認定更新単位設定 | 参加:2単位 / 単位登録時間:15時~16時10分 (セミナー終了後) |
その他 | ◆参加・単位登録とも必ず上記受付時間内に済ませください ◆代理出席・登録は認めません |
託児室のご案内
第283回北海道地方会・教育セミナー・第59回北海道支部生涯教育講演会では託児室(無料)をご用意いたします。ぜひご利用ください。
託児室の詳細・お申し込み
プログラム
企画担当 専門医部会北海道支部 中村 昭伸
司会:手稲渓仁会病院 山田 玄
- 「加齢に伴い増加する腎疾患」
旭川医科大学内科学講座循環・呼吸・神経・病態内科学分野 藤野 貴行
加齢の過程において、感染、薬剤、免疫系などの因子が契機となり、さまざまな組織特異的なダメージが、病態生理的な変化をきたし、多くの病気が年齢を経て生じる。高齢者が腎生検を受ける契機となる臨床像は,ネフローゼ症候群、慢性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群が多い。非高齢者と比較すると,ネフローゼ症候群の割合は約2倍,急速進行性腎炎症候群/急性腎不全の割合は約3倍であったのに対し、慢性腎炎症候群は約半分の割合であった。高齢者の腎生検組織診断(糸球体疾患)では、半月体形成性腎炎、膜性腎症の頻度が高いとされている。加齢は全身および血管炎症に関連し、循環血液中の炎症性サイトカインや急性蛋白が、高齢者で高値であり、心血管リスクとともに、腎障害の発症・進展に強く関与している。加齢を背景とする一次性および二次性腎疾患の症例を検討し、その病態形成メカニズムについて考察する。
- 「HIV/AIDSにおける最近の話題」
北海道大学大学院医学研究院血液内科学教室 後藤 秀樹
2016年末時点で世界中には約3670万人がHIVとともに生きており、約1820万人が抗HIV治療を受け、約210万人が毎年新たにHIVに感染し、約110万人がAIDSに関連する原因で死亡しているのが現状である。絶対数としては多いが、年間新規HIV感染者数でみると2000年の約320万人と比較し、この15年間で約110万人減少した。一方、2016年末時点の日本におけるHIV感染者数は18,920人、AIDS患者数は8,523人であり、両者を合わせた累計は27,443人となった。毎年約1400件程度の新規HIV感染者数を確認しており、ここ数年横ばいであり減少傾向は認められていない。
では一体、HIV感染はどのようにして発見されるのだろうか?
日本における感染経路のほとんどは性交渉であり、大部分を男性間性交渉者(以下MSM: Men who have Sex with Men)が占める。しかしながら、異性間の性的接触での感染者はMSMの感染者と比べてAIDSを発症してからHIV感染が判明することが多い。MSMはHIV感染リスクを認識している率が高く、自発検査の受検率が高いが、異性間の性的接触者は「まさか自分が…」と思っていることが多いため自発検査の受検率が低く、病状が進行するまで診断される機会がないためと考えられる。その一方で、AIDS発症で発見される患者の多くは、AIDS発症前に何かしらの症状で病院を受診していることが多いことも知られている。HIV感染の状態で発見され、適切な治療を受ければ長期的な予後が得られるが、いったんAIDSを発症すれば、治療法が進歩した現在でも致命的な状態になったりその後の生活に大きな支障をきたしたりする可能性が充分ある。本講演では、HIV/AIDSの最近の話題とともに、我々内科医がどういった時にHIV感染を疑い検査すべきかについても概説する。
- 「C型慢性肝炎に対する治療Update」
北海道大学大学院医学研究院消化器内科学教室 須田 剛生
1989年にカイロン社グループがC型肝炎ウイルス(HCV)の存在を初めて報告後、30年もたたない現在、HCVの完全駆除を目指すことが可能な複数の画期的な薬剤が臨床に登場しつつある。HCV発見当初は慢性C型肝炎患者に対する治療は疾患特異的でないインターフェロン(IFN)単独慮法が行われ、ウイルス排除率は10%程度と満足のいく治療成績とは、ほど遠いものであった。以後、抗ウイルス薬であるリバビリン併用療法の登場、ペグ化したインターフェロンとリバビリン併用療法の登場により徐々に治療成績は改善をみとめたが、奏効率が40-50%と十分なものとは言えなかったが、IFN以外の抗HCV薬の開発が長らく進まずにいた。大きな変化は、HCVのウイルス蛋白を直接的に阻害する薬剤の開発によりもたらされた。本邦では2011年から第一世代プロテアーゼ阻害剤であるテラプレビルがペグ化インターフェロン、RBVとの併用療法として臨床で使用可能となった。続いて、2014年にはIFNをプロトコールに含まないNS5A阻害剤ダクラタスビルと、プロテアーゼ阻害剤のアスナプレビル併用療法が承認となり、IFN不応・不耐であった患者を含め、幅広い患者層において治療が導入された。一方で、NS5A耐性ウイルスをはじめとするDAA耐性ウイルスが、新たな問題となった。しかしながらそれら問題点を克服出来る事が期待される複数の薬剤も登場しつつある。ここ数年で劇的な進歩を認めたHCV治療における現状について概説させて頂く。
- 「慢性心不全診療における最近の話題」
札幌医科大学医学部循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座 丹野 雅也
慢性心不全は高齢者が罹患することが多い疾患であり、欧米の研究では55歳の健康成人の3 人に 1 人がその後心不全に罹患すると報告されている。世界でも類を見ない高齢化社会を迎えた日本では、心不全患者数も爆発的に増加し、現在国内の患者数は年間100万人と推定され心不全パンデミックが現実のものとなっている。左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)に関しては、1980年代後半から大規模臨床試験によりアンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、β受容体遮断薬、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬の効果が証明され、更に心臓再同期療法を含む非薬物療法の進歩により、患者の生命予後は改善してきた。しかし、それでもなお重症慢性心不全の予後は現時点の最良の治療を用いても極めて不良であり、進行癌にも匹敵する。一方、左室駆出率が維持された心不全(HFpEF)に関してはその症例数は増加の一途を辿るにも関わらず、生命予後改善効果が証明された治療は現時点では無い。さらに、実臨床で多く遭遇する糖尿病、腎機能障害など複数の合併症を有する高齢心不全症例は大規模臨床試験では除外されることも多く、厳密な意味ではエビデンスは無い。その治療に関しては臨床試験の結果を参考にしつつ、個々の症例に応じた検討が必要である。本講演ではこうした問題点を踏まえ、心不全治療の現在および今後の展望について概説する。