教育セミナーは当日のみの開催で、アーカイブ配信はありません。
web参加で参加単位取得をご希望の先生方は、当日オンタイムでご視聴ください。
内科臨床学習セミナー
テーマ 『Common diseaseとしての心不全』
“心不全パンデミック”という言葉は,COVID-19流行以前から流行していた.実際,本邦の心不全患者数は約120万人に増加し,高齢化に伴いさらに増加することが予想されており,すべての内科医が心不全診療の一端を担うことを求められている.以上から,心不全診断技術の習得,適切な急性心不全への初期対応,そしてevidence-based medicineに根ざした慢性心不全薬物治療の知識習得が必要になる.さらに,健康寿命延伸という視点からは高齢心不全におけるサルコペニア・フレイル・低栄養対策が急務である.本セミナーでは各分野のエキスパートに“全ての内科医に役立つ心不全の診断・治療”について解説して頂く.
開催日 | 2022年11月19日(土) 14時~15時30分 |
開催形式 | web開催 (会場設定はありません) |
企画 | 専門医部会北海道支部 |
世話人 | 札幌医科大学 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座 矢野 俊之 |
参加費 | 無料。ただし教育セミナーだけの参加はできません。 |
参加方法 | 第296回北海道地方会への事前参加登録が必要になります。 ※お住まいの地域に関係なくご参加いただけます。 |
認定更新単位設定 | 【認定内科医・総合内科専門医】2単位 ※視聴時間は任意といたしますが、60分以上のご参加をお願いいたします。参加登録をしただけでは取得できませんのでご注意ください。 入退場時間記録について |
【内科専門医】[出席単位]:なし [視聴単位]:1単位/1時間 ※視聴時間が問われます 「内科専門医」資格の認定と更新についてのご案内 |
|
その他 | 単位がパーソナルウェブに反映まで1か月程度かかります 参加状況確認後、事務局にて自動付与いたします。別途申請等を行う必要はありません |
プログラム
テーマ 『Common diseaseとしての心不全』
- 企画担当者
- 札幌医科大学医学部 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座 矢野 俊之
- 司会
- 旭川医科大学 病態代謝・消化器・血液腫瘍制御内科学講座 田邊 裕貴
- プログラム
-
- BNPだけじゃない:すべての内科医に必要な心不全診断の基礎知識
札幌医科大学 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座 永野 伸卓
我が国における心不全患者数は現在約120万人と推計されているが、超高齢化の進行により2035年まではさらに増え続けると推定されており、「心不全パンデミック」と呼ばれている。
これに対応すべく心不全治療も発展してきており、複数の新規薬物治療、弁膜症に対するカテーテル治療など心不全治療は目覚しい発展をとげている。また昨今では「がん治療関連心筋障害」も注目されており、がん専門医と循環器医の連携も重要になってきている。以上2つの観点からも、循環器専門医のみならずすべての内科医が心不全を正確に診断し、必要に応じて循環器専門医への紹介を行うことは患者の予後改善につながると考えられる。
心不全の診断ツールとしては、血液検査でのBNPまたはNT pro BNPの測定が簡便であり非常に有用ではあるが、腎機能障害, 心房細動, 肥満の有無など測定値に影響を与える因子も多く、結果の解釈には注意を要する場合もある。このため自覚症状, 身体所見, 胸部レントゲン写真などを総合して心不全を診断する必要がある。
本講演では心不全の病態から心不全の診断方法、BNPを用いる際の注意点などに関して概説する。
- 急性心不全初期マネジメントのコツ ~最近のトレンド~
北海道大学 循環病態内科学 永井 利幸
急性非代償性心不全の臨床病態は①低心拍出状態、②肺うっ血、③体うっ血に特徴づけられる。従来、急性期は適切な呼吸管理を行いながら、心血管作動薬である利尿剤、血管拡張剤、強心剤、昇圧剤等を各病態に応じて適切に選択することが基本とされてきた。心血管作動薬の中でも、特に利尿剤、血管拡張剤を中心に、新薬による急性期および慢性期の予後改善効果が期待されたが、大規模臨床試験で明確に予後改善効果を示すことに成功した薬剤はほとんどない。さらに、近年においては、急性期におけるルーチンの血管拡張剤使用に警鐘を鳴らす報告も相次いで報告され、2021年に発表された最新の欧州心不全ガイドラインでは血管拡張剤使用の推奨クラスがダウングレードされた。一方で、発症からのタイムラインを意識した初期治療がクローズアップされるようになり、各臨床病態に応じて、どれくらいのタイムラインで何を考えて治療方針の選択を行い、どのように治療反応を評価し、治療方針を見直すのかに関するアルゴリズムが提唱されるようになった。また、急性期から慢性期予後を意識した初期治療のトレンドとして、新薬であるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬やSGLT2阻害薬を、いつ、どのように組み込んでゆけば良いのかに関するエビデンスも蓄積されてきており、急性心不全の初期マネジメント戦略は大きな転換点を迎えている。本教育講演では、最新のエビデンスを紐解きながら、最も効果的な急性心不全初期マネジメント戦略について情報共有したい。
- 群雄割拠の慢性心不全薬物治療 ~いつ・だれに・何のために~
王子総合病院 循環器内科 三木 隆幸
わが国は高齢化に伴い心不全パンデミックを迎えており、心不全はもはやcommon diseaseとして一般内科医が治療を担当しなければならない時代となった。これまで心機能の低下した心不全(HFrEF)に対しては、ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体遮断薬を用いた治療が推奨されてきた。ここ数年、新しい機序の薬剤であるサクビトリルバルサルタン、SGLT2阻害薬、ベルイシグアト、イバブラジンが登場し、大規模臨床試験によってこれらの薬剤の治療効果が明らかとなった。したがって、既存の心不全治療薬に加えてこれらの新規治療薬を適切に使用することが、心不全患者の予後改善に重要と考えられるが、使用する順番や優先順位などについては議論がある。また、これまで有効な治療薬がなかった心機能の保たれた心不全(HFpEF)に対して、大規模臨床試験によってSGLT2阻害薬の有用性が示された。
本セミナーでは、これまでの大規模臨床試験から見えてきたポイント、実臨床における使用経験を整理し、心不全治療における新規治療薬の役割と課題を概説したい。
- サルコペニア・フレイルを意識した高齢者診療
北海道循環器病院 循環器内科 大堀 克彦
人口構成の高齢化に伴い, 心不全患者は増加の一途をたどり, その対応は緊喫の課題である. 高齢心不全患者はフレイルの有病率が高く, 再入院やQOL低下, 予後不良と関連することが知られている. フレイルは生理的予備能低下に伴い, ストレスに対する脆弱性が亢進し, 身体障害や死亡のリスクが増加した状態と定義されている. さらに, フレイルは自立から要介護状態への中間的な段階と考えられ, 介入による可逆性を有することから, 早期に適切な診断と治療を行うことが望ましい. また, フレイルの身体的構成要素の一つにサルコペニアが挙げられる. サルコペニアは骨格筋量減少に筋機能低下を伴う臨床症候群と定義され, これもまた心不全患者における予後不良の予測因子である. サルコペニアの原因として, 加齢に伴う同化・異化ホルモンバランスの変化や炎症性サイトカインの増加が提唱されているが, 心不全ではそれらに加えて神経体液性因子の活性化や低栄養, 身体活動減少なども増悪因子となりうる. フレイル・サルコペニアに対する介入の基本は, 十分な栄養摂取を前提とした運動療法である. 運動療法としてはレジスタンストレーニングを中心に有酸素運動や機能訓練等が推奨されており, 栄養療法としてはカロリーだけではなく、病態に応じた必要十分な蛋白質摂取も必要である. また, 心不全とフレイル・サルコペニアの病態には重複する領域も大きいことから, 薬物療法を主とした疾病管理も重要である. これらの多面的な介入を行うためには多職種によるチームアプローチが有効であり, 近年では心不全療養指導士制度が創設され, 今後の活躍が期待される. 本講演ではフレイル・サルコペニアを合併した高齢心不全患者ついて臨床像や治療方針などについて概説する。
- BNPだけじゃない:すべての内科医に必要な心不全診断の基礎知識