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第110回日本内科学会講演会 男女共同参画企画公開シンポジウム

年次講演会

第110回日本内科学会講演会 男女共同参画企画
公開シンポジウム

Born Female: A Disadvantage from Birth?
「女性に生まれると、生涯不利なのか?」

座長挨拶

 
東京慈恵会医科大学 田嶼 尚子

去年10月のことです。スイスにある世界経済フォーラムというシンクタンクが男女間の格差という年次報告書を発表し、日本の男女間の格差は世界135カ国中なんと101位という驚くべき事実を示しました。この調査は、女性が

①どの程度経済活動に参画し、機会を与えられているか
②教育面はどうか
③政治への関与や意思決定への参画はどうか
④健康、医療、寿命はどうか

という4つの分野で各国の状況を比較しているものです。1位はアイスランド、続いてフィンランド、ノルウェー、スエーデンとトップは北欧の国が並び、イギリス18位、アメリカ22位、中国69位と続きますが、日本は前の年の98位からさらに順位を下げて去年は101位になったと言うのです。女性の平均寿命は世界第2位。教育水準も経済水準も高いはずの日本で、何故これほどまで男女間の格差が大きいと判定されたのか。その答えは、日本の女性の政治への関与、意思決定への参画があまりにも低いことです。


欧米を中心に「ガラスの天井(Glass Ceiling)」という言葉をよく耳にします。社会全般、とりわけ企業、公官庁、教育研究機関などで、女性がある一定のレベルまで地位を上げてくると、まるで目に見えないガラスの天井に頭を打ち付けたように、その先には進めなくなる。特に「意思決定」に関与できる地位が近づくとガラスの天井に阻まれるケースが多いという意味です。世界経済フォーラムの報告は日本のガラスの天井が極めて低い位置にあり、しかも多くの女性がそのガラスに到達すらできないで、低い地位に甘んじていることを厳しく指摘しているのです。


もちろん日本ではこれまでにも、女性の地位を向上し、男女間の格差を減らすための様々な施策が採られてきました。しかし、国際的に見ると日本の現状は決して満足出来るものではなく、まだまだ改善の余地があることをこの報告は物語っています。医学、医療の分野も例外ではありません。確かに日本の女性医師の数は右肩上がりで増えてはいますが、指導的立場に就く割合は低いのが実情です。女性が医師としての仕事と家庭を両立させ、継続的に働くことでキャリアを形成しようとする時に一体何が障害になっているのでしょうか。労働人口が大きく減少する近未来にむけて、女性医師の能力を開発し支援するために必要な社会の仕組みはどうあるべきなのでしょう。男女共同参画を推進する際に男性の理解と支援は不可欠ですが、男性の意識改革はどうでしょうか。一方、女性は権利を主張するだけでなく、社会的責任もしっかり果たしているでしょうか。考えるべき点は枚挙に暇がありません。


そこでこの公開シンポジウムは「女性に生まれると、生涯不利なのか?」という素朴で直截なタイトルのもとに、グローバルな視点からこの点について考えることにしました。基調講演は、女性の問題を扱う国連機関として2010年に設立されたUN Womenの総合企画局長であるクリスチン・ヘトレさんにお願いしてあります。ヘトレさんは、女性の小児科医のグロ・ハーレム・ブルントラントさんが1980年代から90年代にかけて3回も首相を勤めたことで知られる北欧ノルウェーのご出身で、ノルウェー労働省の局長、民間企業、国際機関にもお勤めになったことがあり、北欧はもちろん世界のジェンダー問題に精通しておられる方です。一方、基調講演を受けた討論には、アメリカのピッツバーグ大学医学部で長年小児科内分泌部門の教授を勤めておられるドロシー・ベッカーさん。日本からは、東京女子医科大学消化器病内科教授の橋本悦子さんと東京大学医学部特任助教でいらっしゃる脇嘉代さん、それに、私と共にこの公開シンポジウムの共同座長をしていただいている京都大学大学院医学研究科腎臓内科学教授の柳田素子さんにもディスカッサントをしてご参加いただき、UN Womenの活動、米国の事情、日本の現状と課題、提言等について討論を進めてまいります。討論の締めくくりには日本内科学会理事長の寺本民生教授からコメントをいただくことにしております。また討論の後半には会場からご意見ご質問を頂戴したいと考えておりますので、皆様の活発なご発言をお願い申し上げます。


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